ゲームをゲームとして成り立たせるには何が必要か?
国籍・文化を問わず子どもは皆同じく子どもですが、床に座って話を聞いていた中には、やがて集中力が切れて、落ち着きがなくなる子も出てきました。そこで私は話題を変えて、「イギリスの小学校の子どもたちからは、ゲームのアイデアはどうやって思いつくの?とよく聞かれるのよ」と言いました。
この疑問に答えるには、まず、ゲームをゲームとして成り立たせるには何が必要なのか考えるということが大切です。弟が遊んでいた木製のブロックをゲームに変えるために、私は何をしなければならなかったでしょうか?
別の言い方をすれば、ブランコに乗ったり走り回ったりする単なる遊びと、ゲームで遊ぶことの違いは何でしょうか。
私や仲間たちがたどり着いた結論は、ゲームには始まりと終わりがなければならないということでした。ゲームを始める前には、どのようにすればゲームに勝てるのかがわかっていなければなりません。さらに、すべてのゲームにはルールが必要です。
ここまで話してから、私は子どもたちに「さあ、これでみなさんも自分でゲームを考案できるようになったはずですね」と言い、課題を出しました。
子どもたちにゲームのアイデアを考えてもらう
子どもたちは4つのチームに分かれ、1人に1枚ずつ白い用紙を配りました。そして、この白い紙だけを使って10分間でゲームのアイデアを考えるのです。
私はイギリスの小学校でも何度か子どもたちにゲームのアイデアを考えてもらうことがありましたが、イギリスでこうした企画の話をすると子どもたちは興奮して大騒ぎになり、質問がたくさん出たものでした。
ところが、ここ雄勝小学校の子どもたちは静かに私の話を聞き、質問は出てきません。ゲームの企画のような創造力を試す課題は、ここではなじまないのではないだろうか。私は少し不安になりました。
しかし、その心配は無用でした。子どもたちはチームに分かれるや否や話し始め、時には大声を上げ笑いながら、ゲームを考えていました。そして10分後、それぞれのチームは自分たちの考えたゲームを皆の前で発表しました。とても楽しい発表会でした。
各チームの発表を聞いていて、私は子どもたちがこの課題のポイントをしっかりとつかんでいること、そして、発表されたアイデアがとてもユニークで、創造性に富み、普通、あまり思いつかないようなものであったことにたいへん驚きました。
私は教育者ではありませんし、わが子以外の子どもたちと一緒に何かに取り組むという経験も、あまり多くはありませんでしたが、子どもたちのアイデアそのもののユニークさや創造性はとても印象的でした。
私が最も感激したことは、目の前にいる子どもたち全員が協力し合って、チームとして、とてもよくまとまっている様子を目にしたことです。
この実習の後、私は各チームにジェンガを渡して遊んでもらいました。子どもたちが私のゲームで楽しそうに遊ぶ姿をみて、どんなにうれしかったことでしょう。感無量で言葉に表せないほどです。
26人の子どもたちとの講義が終わった後、私は校長室を訪れ、遠藤校長とお茶を飲みながら児童の置かれている状況についてお聞きすることができました。
2011年3月の大地震と津波による被災で、ここにいる子どもたちのほとんどは、小さな仮設住宅での生活を余儀なくされているそうです。
家の中に子どもたちの遊ぶスペースはなく、屋外でも自由に遊べる場所は限られています。しかも、今年の冬は天候が非常に悪かったため、子どもたちは学校に来ても外で遊ぶチャンスがほとんどありませんでした。校長先生は、こうした中でジェンガは理想的な玩具であると感じたそうです。
ジェンガは屋内で遊べる玩具ですが、外でスポーツをするときと同じような身体能力も多少必要で、そのうえ、とても面白いとおっしゃってくださいました。この校長先生の言葉は私の心を打ち、子どもたちが楽しくジェンガで遊ぶ光景と同様に、大きな喜びとして記憶に残りました。
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