米議会突入と香港弾圧、世界が向う「2つの暗黒」 二大国が競演「ディストピアの時代」の現実

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連邦議会における次期大統領の決定という、議会制度を象徴する最も重要な手続きを暴徒が暴力でもって粉砕しようとする。それに対し、警官が市民に銃口を向け、武装した兵士が議会内を闊歩し、複数の死者が出た。これはもう民主主義とは無縁の光景でしかない。

そして、それを世界中の市民が生々しい映像で目撃した。アメリカは世界の範たりえないばかりか、その逆の方向に向かっているのだ。

そして、アメリカ議会の暴動事件の前日の6日、今やアメリカと並ぶ大国となりつつある中国でも大きなニュースが走った。香港警察が民主派の前立法会議員ら53人を国家安全維持法違反の疑いで逮捕した。日本ではあまり大きな話題になってはいないが、これも衝撃的な事件である。

中国は香港民主化を徹底弾圧

香港では2020年9月に国会にあたる立法会の議員選挙が予定されていた。それに合わせて民主派勢力は候補者を選ぶための予備選を行ったが、そのとき掲げた「過半数の議席を獲得して政権を麻痺させる」という目標が、今や悪名高き香港国家安全維持法が違法とする「政権転覆の画策」に当たるというのである。

肝心の立法会選挙は延期された。そして、在職していた民主派の議員がその後、全員辞職したため、議会は中国政府支持派で占められている。今回の逮捕を見る限り、仮に今年、立法会選挙が行われても、民主派勢力が多数を占めることはもちろん、まともに立候補することさえも困難なだろう。中国政府がいよいよ本格的に香港民主派弾圧の牙をむいてきたのである。

経済学者の岩井克人氏は近年のアメリカと中国を指して「ともにディストピアとみられるようになった」と表現している(2021年1月4日付日本経済新聞)。米ソ冷戦時代、アメリカは資本主義を、ソ連は社会主義を掲げ、それぞれが自らの政治経済体制の優越性を主張し、同盟国を増やすなど陣地拡大を競っていた。岩井氏はそれを「ユートピアの争い」と表現している。

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