忘年会が消えた!飲食店が迎えた「極寒の冬」 コロナ第3波が直撃、すすきのの人通りは7割減

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テンアライドでは実際、例年12月の来店客数(既存店ベース)は最も少ない月と比べて約2割増となり、客単価も年間で最も高い。コロナの影響がまったくなかった2019年3月期決算では、各四半期の中で10~12月の第3四半期が売上高、営業利益ともに最高だった。

同社では新型コロナ感染者が抑制されていた11月中旬までは客足が回復傾向だったが、第3波による時短営業要請が出された11月25日頃から急減。11月の既存店売上高は前年同月比43.9%減にまで落ち込んでしまった。「12月はさらに厳しい数字が出る」(テンアライド幹部)といい、利益の源泉とも言えるシーズンであるはずが今期は一転、多額の赤字を計上することになるのは間違いない。

春先の歓送迎会も期待できず

こうした厳しい状況下において、実態に即さず一貫性のない行政の対応に振り回される飲食店側の不満は根強い。

「感染者が増えたら営業時間短縮要請。落ち着いたら解除し、また時短要請。一体いつまで振り回されるのか」。前出の飲食店経営者は憤りを隠さない。2021年1月11日までの営業時間短縮要請に応じ、感染拡大防止協力金100万円を受給する予定だというが、売り上げが激減するなか、高い賃料と従業員への給与を補えるほどの額ではないという。

「飲食店ばかりが感染源となっているかのようなメッセージが連日のように発信される。ほとんどの店は行政の定めた感染症対策を施しているのに、なぜわれわれは悪者扱いされ、ここまでの犠牲を強いられなければならないのか」(同)

個人店よりは余裕があると思われがちなチェーンはさらに厳しい。ある外食チェーン幹部は「これまで自治体からの要請すべてに応じ、臨時休業・時短営業などに踏み切った。だが、協力金の対象は原則として中小企業のみで1円ももらえない。感染症対策に協力するという点では個人店もチェーンも同じはずなのに、あまりにも不公平ではないか」と怒りをあらわにする。

忘年会需要を失ったいま、次の焦点は3~4月の歓送迎会シーズンだ。だが、少なくとも現時点では状況が好転する兆しは見られない。居酒屋ブランド「金の蔵」を持つ三光マーケティングフーズも「このままの流れでいくと、春の歓送迎会シーズンも期待できない」と覚悟している。

居酒屋チェーンでは、コロナ影響が甚大な大箱の居酒屋を大量閉店し、販売チャネルの拡充や新業態育成に注力する動きが活発化している。

実際、テンアライドは自社通販サイト「天狗キッチン」を開始したり、売り上げが落ちなかった立ち飲みの小型店「神田屋」の積極投入を企図したりする。三光マーケティングフーズも、居酒屋を大量閉店する一方、「焼肉万里」などに注力。残した居酒屋店舗で同社の保有するブランド「東京チカラめし」の焼き牛丼を販売する「二毛作戦略」を打つなど、懸命な努力を続ける。

だが、これまで「当たり前」だったビジネスモデルを転換するのは容易なことではない。すでに少なくない企業が最終赤字に転落し自己資本を痛める結果となっている中、「もはや私企業の努力で何とかなるレベルではない」という声が業界内から漏れ伝わってくる。「資金繰り」や「雇用維持」など様々な課題が噴出する外食産業には、行政からの抜本的な支援策が急務だ。

【情報提供のお願い】東洋経済では、外食業界が抱える課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームでは飲食店経営者や従業員の方々からの情報提供をお待ちしております。
中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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