“優良企業”アップルが挑む3度目の「i革命」
今や、アップルはシリコンバレー随一の超優良企業だ。03年1~3月期に400万ドルの営業赤字を計上したのを最後に、黒字企業へと転換。それ以降、順調に成長を続け、09年9月期は年間売り上げ365億ドル(約3・3兆円)、純利益57億ドル(約5100億円)となった。期末までに蓄積した現金と短期投資の合計はおよそ400億ドル(約3・6兆円)にも及ぶ。
2月25日に開かれた年次株主総会で、この潤沢な資金の使い道について株主から尋ねられたジョブズ氏は「リスクを取ってビジネスを進めるためには、うまくいかなかったときのための備えが必要」と説明。配当増加を求める声を軽くいなした。
これまでにアップルに莫大な利益をもたらしてきたのは、「二つのi」だ。一つが01年10月に発売した携帯デジタル音楽プレーヤーのiPod。当初は自社パソコンであるマック向けのニッチ商品だったが、翌年にウィンドウズ対応版を投入してから販売が急増。04年にはミニ、05年にはフラッシュメモリを用いたナノを投入し、この分野で圧倒的なシェアを獲得した。
円グラフ(セグメント別売り上げ)を見てほしい。2年前には全売り上げのおよそ半分がiPodと周辺機器、音楽販売で占められていた。しかし07年6月発売の多機能携帯端末iPhoneにより、売り上げ構成は様変わり。今ではiPodの売り上げ成長はストップし、代わってiPodの機能も取り込んだiPhoneが最大セグメントになった。