【産業天気図・人材サービス】派遣法改正問題と不況の長期化が挟撃、終始「曇り」の厳しい展望

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10年4月~9月 10年10月~11年3月

2010年度の人材派遣業界は、労働者派遣法改正と長引く不況に挟撃され、厳しい状況が続きそうだ。11年3月まで1年間終始、「曇り」が続く見通しだ。

民主党政権は通常国会で労働者派遣法改正法案を提出する構えだ。改正法案には製造業派遣および登録型派遣の原則禁止が盛り込まれる見込みで、同事業を主体としている企業は人材派遣から業務請負契約への切り替えや人材紹介へのシフトを迫られる。製造業派遣では、UTホールディングス、アウトソーシング、ワールドインテック、フジスタッフホールディングスなどが該当する。

また、登録型派遣では、パソナグループやテンプホールディングスが上場企業での大どころだ。さらに登録型派遣では今年2月に、期間制限のない専門26業務についても監督強化の方針が厚生労働省から示された。これにより、「事務用機器操作」や「ファイリング」などの目的で派遣されていながら、お茶くみやコピー取りがもっぱらの仕事である場合には違法派遣とみなされるリスクが高まった。今後、企業側が派遣契約を結ぶのを躊躇する可能性が高まることも指摘されており、派遣会社にとって頭痛の種になっている。

そもそも不況の長期化が、派遣労働需要の低迷をもたらしている。派遣労働者は08年度に399万人(常用換算では199万人)と過去最高を記録した後、リーマンショック後の「派遣切り」(解雇や契約更新の打ち切り)で激減。寮を追い出されたり、仕事が長期間見つからない労働者が続出した。派遣需要は09年秋口に減少に歯止めがかかったものの、増加ペースは依然として弱い。そのため、パソナグループ<2168>やテンプホールディングス<2181>などの登録型の大手派遣会社は大幅減益に見舞われている。

また、メイテック<9744>やアルプス技研<4641>など専門技術者を自社で雇用したうえで企業に派遣する「特定派遣」の形態を取る企業は、多くの非稼働社員を社内に多く抱え、雇用調整助成金の受給によって雇用の維持を続けている状態。特定派遣最大手のメイテックは助成金の受給を受けながらも多額の赤字を余儀なくされている。同社は今年初めからの春期の賃金交渉(春闘)で労働組合に対して賃金水準の大幅な引き下げを提示。11年度決算の黒字転換をめざしているがきわめて厳しい情勢だ。
(岡田 広行)

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