エンジニアが育たない国と育つ国の圧倒的違い 中国ではエンジニアが「ヒーロー」になれる

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日本最大級のユニコーン企業、Preferred Networks(PFN:プリファードネットワークス)が教育事業に進出し話題を呼んでいる。同社はトヨタと自動運転開発の協業や、NTTとの資本提携による「次世代ビッグデータ技術」の確立を目指すなど、その最先端技術へのニーズは引きも切らず、「最強AI技術者集団」との呼び声も高い。そんな中での教育事業への進出。なぜ創業者である西川徹氏はプログラミング教育を軸にした事業を進めるのか、なぜ世界のトップ企業が欲しがるその頭脳を日本の教育のために使うのか。
※ユニコーン企業:企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上で、未上場のベンチャー企業を指す。ユニコーンのようにまれで、巨額の利益を出す可能性がある企業として投資家を中心に注目を集めている。PFNの評価額は3572億円(2020年10月現在)といわれており、数少ない日本のユニコーン企業の1つである。

テクノロジーの先端が見せる未来の日本

――近い将来、私たちの生活は今まで以上にAIなどのテクノロジーと密接になっていくといわれています。そうした中でテクノロジーとはどのように付き合っていけばいいと思いますか。

テクノロジーに対して適切な理解を持つことが必要だと思っています。今はまだ正直、日本ではコンピュータサイエンスへの理解が不足しているように感じています。プログラミングやAIに通じた人材も足りていないというのが現実で、それは解決すべき課題だと思っています。

すでにサイバーセキュリティに関するリテラシーがないために、SNSアカウントを盗まれてしまうなどの身近な脅威が存在しています。この先、さらにテクノロジーが進展していくので、テクノロジーを使いこなす努力を惜しまないことが大切です。

Preferred Networks(PFN) 代表取締役 最高経営責任者 西川 徹

――確かに、海外に比べて日本ではプログラミングやAIの分野で後れを取っているといわれるようになりました。

例えば、中国では国策的に20年以上前からICT教育に非常に力を入れていました。私がプログラミングコンテスト(プロコン)の国際大会に出ていたとき、日本から参加するチームは数十だったのに対して、中国は数百というチームが予選に出場していたんです。中国では、プロコン優勝者は「ヒーロー」のように捉えられていて、将来の活躍の場もしっかり用意されていました。

一方で、その頃の日本ではエンジニアはどちらかというとオタク扱いで、プロコン出身者が活躍できる場も限られていたことが残念でした。このような過去からの積み重ねにより、中国は層がどんどん厚くなっていったので、今ITが強いのは当たり前の状況だと思います。そこでわかることはいかに「教育」が重要か、ということではないでしょうか。これからの教育次第で日本もICT人材の層を厚くすることもできるし、層が厚くなればトップを目指す人も出てくるはずです。

――日本でも最近は、GIGAスクール構想やプログラミング教育の必修化などの動きがありました。これで遅れを取り戻すことはできるでしょうか。

GIGAスクール構想も、プログラミング授業の必修化もとても面白い試みだと思います。学校に1人1台コンピュータが置かれるようになれば、子どもたちがそれに触れる機会も増えます。ICT人材の層が厚くなる期待感ももちろんありますが、何より、より多くの子どもにコンピュータサイエンスの面白さを知ってほしいですね。

私がプログラミングを始めた頃は、すごいものを作れる、わくわく感やほかの人がやっていない特別感のようなものがありました。プログラミングの義務教育化において、ただ1つ心配があるとすれば、誰もが同じように学校での「勉強」として学ぶことによって「なんだ、こんなものか」と思われたり、「やらされている感」が生じて、好奇心が削がれてしまったりしないか、ということですね。

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