西武線は日本のアニメを育てた「影の功労者」だ アニメ界出身の鉄道写真家が語る「青春時代」
筆者が西武秩父線に通った目的はもちろんカッコいいレッドアローの存在もあるが、貨物輸送に活躍していた電気機関車の数々だった。
GE(ゼネラル・エレクトリック)製やスイスのブラウンボべリ製などの旧型輸入機、そして国鉄EF65形並みの大きさを誇る新鋭の大型電機E851形が新線の山並みを行く姿は絶景で、その合間に近代的なレッドアローが通過するのだから西武秩父線は筆者にとってはたまらない路線だった。
この初代レッドアロー5000系は、第13回(1970年)の「鉄道友の会」ブルーリボン賞を西武の車両として初めて受賞している。1993年12月に後継の「ニューレッドアロー」10000系が登場すると5000系は姿を消していったが、2011年11月には5000系の塗装を再現した「レッドアロークラシック」が運行を開始。西武鉄道ファンの根強い人気を保っている。
他方、東映動画スタジオとして日本のアニメ産業を支えてきた大泉のスタジオは建物の老朽化のため、「レッドアロー」の変貌期と同じくして取り壊しが決定した。その後2017年には同地に新スタジオが竣工し、2018年1月より稼働を開始。館内には長年の作品の実績を伝える東映アニメーションミュージアムがオープンして一般公開されている。
SFアニメのような新特急
その翌年2019年、西武は新たな特急車両の運行を開始した。001系「Laview(ラビュー)」である。あたかもSFアニメのメカを思わせる大胆なデザインは新しい西武の顔として人気を呼び、秩父への観光客誘致に活躍している。西武としては5000系レッドアロー以来50年ぶりとなるブルーリボン賞も受賞した。
西武とアニメがコラボした話題としては、人気漫画「ドラえもん」の連載開始50周年を記念したラッピング電車が今年10月8日から西武新宿線を中心に走り始めた。ドラえもんのアニメーションを制作する「シンエイ動画」の本社社屋が新宿線沿線の田無にあり、ここがテレビと映画の「ドラえもん」シリーズの発祥の地ということもあり、運行が決まったものだ。30000系の正面をドラえもんの顔に見立て、車内の至る所にキャラクターを配して子どもたちの人気を集めている。
私事であるが、筆者は昭和40年代初頭、上京して「シンエイ動画」の前身であるAプロダクションに入社してアニメ界に入り、「ルパン三世」の制作中に、その原作を連載する出版社の雑誌連載を担当することになってアニメ界を去った。その私にとって、Aプロからシンエイ動画へとプロダクションを大きく成長させた主宰者の故・楠部大吉郎さんと、私が鉄道写真家になるきっかけと大いなる後押しをいただいた大塚康生さんには感謝の念に堪えない。
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