民間人が生け贄 石原都政の無責任 元代表執行役だけが戦犯か
「うるさいから黙って聞けよ」
石原慎太郎・東京都知事は野党議員のやじを]喝すると、再び持論をぶった。「私が社長だったら、もっと大きな銀行にしてましたよ」。知事はあくまで強気の姿勢だ。なおも議員が責任追及すると、今度は与党席から激しいやじが飛ぶ。
11日、新銀行東京への追加出資400億円の是非を話し合う都議会予算特別委員会は荒れた。追及したのは民主、共産両党。一方で多数を占める白民、公明両党は「石原都政」支持の姿勢を鮮明にした。民主に気を遣った委員長に対し、与党議員が詰め寄る場面もあった。批判が多い中、追加出資を盛り込んだ予算案は最終日28日に可決の見通しだ。
石原知事が2期目の公約とし、2005年4月に開業した新銀行東京は不良債権を積み上げ、経営危機に陥った。今年3月末には都が拠出した1000億円が欠損金により食い潰される見込みだ。銀行と都は民間に支援を要請したが、協議は不調。両者は2月、大幅な縮小均衡策と都の追加出資をセットにした延命計画をまとめるよりなかった。
都の説明によると、清算の場合、預金払い戻しなどで1000億円が必要という。預金保険法を適用する破綻処理だと、ペイオフにより預金カットを余儀なくされる個人が9500人に上るとも訴える。
鳴り物入りで始めた新銀行が大失敗に終わったことは否定しようがない。当然、知事以下の都庁幹部には責任論が避けて通れない。ところが、「考え方や理念に誤りはなかった」などとして、都は強気の姿勢だ。その最大の拠り所となっているのが、予算特別委員会の前日に、新銀行が公表した「調査報告書」である。
デフォルト不問の乱脈責任は元代表執行役に
報告書が繰り返し批判するのは、元代表執行役の仁司泰正氏による「独善経営」。仁司氏はトヨタ白動車出身で、トーメンの副社長として経営再建に手腕を発揮した人物。新銀行の役員として真っ先に内定し、昨年6月まで実務トップだった。
手のひらを返したように報告書は同氏による放漫経営の数々を列挙する。朝礼では「貸倒引当金をしっかり使い込むこと」と常識外れの指示を飛ばし、融資額に応じた契約社員の成果制度ではデフォルト発生を不問に付したという。ほかの執行役の進言を聞き入れず、嫌気が差しての辞任が相次いだ。監査人の改善提案にも聞く耳を持たなかったという。