朝日新聞「創業来の大赤字」のとてつもない難題 構造改革を難しくさせている3つの要因

拡大
縮小

この死の谷のポジションの企業は、業界が好調のときは利益が上がるのですが、不況になるとまっさきに業績が悪くなります。そして業界が縮小して事業から撤退するのも死の谷の企業から始まります。東芝が家電事業を中国企業に売却したのもその理屈です。

興味深いことに業界のさらに下位の企業の中には好業績を上げる企業があります。トップと同じことをやっていたら勝てないことが自明なので差異化を試みて成功するのです。

新聞業界では2020年上半期時点で771万部(ABC部数、以下同じ)と部数トップの読売新聞が持ちこたえている一方で、516万部と2番手の朝日新聞が大赤字に転落したというのが今回の話です。ちなみに全国紙では3番手が225万部の毎日新聞、4番手が213万部の日本経済新聞、5番手が133万部の産経新聞ということになります(直近で3番手と4番手が僅差で入れ替わったというニュースもありますがここではこの順位のままでお話しします)。

毎日、産経はすでに縮小経営を進めている

読売新聞も10年前まではだいたい1000万部の部数近辺で安定推移していたのが、2014年頃から急落を始めました。この上半期が771万部というと「かなり減ってきたな」というのが正直な印象です。ここ数年は新聞業界全体では毎年200万部ペースで発行部数が減少しています。

こういう長期凋落傾向の経営環境になってしまうと、業界トップの読売と同じやり方で対抗しようとする2番手の朝日の業績が大きく沈んでしまうのは、経営戦略のセオリー通りの現象だといえるのです。同様に毎日や産経も苦しく、希望退職を募るなど縮小経営を進めてきています。

一方、4番手の日経新聞は経済情報にフォーカスすることで逆に存在感を増しています。昨年度の日本経済新聞社の連結売上高は3568億円で、朝日新聞社が3536億円ですから、発行部数では半分以下でも経営手法で抜き去っている。この「下位企業は差異化によって死の谷から抜け出すことができる」というセオリーを具現化しているのが日経新聞社ということです。

いずれにしても朝日新聞社は「死の谷」のポジションにいる2番手企業だというのが構造的に朝日新聞社の経営改革を難しくしている1番目の条件です。

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