「消毒すればOK」という誤った感染対策の超危険 最も重要な感染対策がおろそかになっている

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「テニスのパートナーと試合後に握手するのは、やめにした。ただ、(テニスをしている間は)相手が手で触ったボールをこちらも手で持ったりしているわけだし、これにいったい何の意味があるのだろう」。文筆家のジェフ・ダイヤー氏は3月、老舗文芸誌『ニューヨーカー』で発表したエッセーにこう記し、潔癖症的な時代精神を切り取った。

香港では新型コロナで5400人を超える感染と108人の死亡(11月中旬時点)が確認されているが、これは大都市としては、どちらかといえば低い部類に属する。とはいえ、屋内のエアロゾル感染への対応が遅れたと指摘する専門家もいる。

香港当局は早い段階で、レストランに対しテーブルの間に仕切りを設置するよう求めた。10月に行われたアメリカ副大統領候補の討論会で使われたのと同じ種類の、ほとんど何の役にも立たない薄っぺらな防護パネルだ。

香港当局は屋内での集まりに対する規制を徐々に緩めてきており、結婚披露宴も50人までの参加が許可された。そのため、屋内で新たな集団感染が起こるのではないかと危惧されるようになっている。

オフィスでマスクを外す人の「盲点」

香港ではリモートワークが徹底されていないため、一部の専門家は、混雑したオフィスの通気口を通じてウイルスが拡散することを特に懸念している。

「昼食時や自分のキュービクル(仕切りで囲われたオフィス内の個人スペース)に戻ってきたときにマスクを外してしまう人は多い。キュービクルは自分だけの空間だと思い込んでいるのだ」と、香港科技大学の楊経倫教授(化学・生物工学)は話す。

「でも、忘れないでほしい。あなたが吸い込んでいる空気は、基本的には(まわりの人たちが呼吸しているのと)同じ空気なのだということを」

(執筆:Mike Ives記者、Apoorva Mandavilli記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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