ドバイ案件で損失覚悟 大手ゼネコンの隘路

拡大
縮小


資産売却で穴埋めし赤字の転落を回避か

下記のグラフのように、大手ゼネコン各社の工事採算は鹿島や大林以外も急速に悪化した。「国内土木の粗利率は安定しているのに、土木全体の粗利率が悪化したのは、海外が足を引っ張っているから」(みずほ証券の高橋光佳シニアクレジットアナリスト)。

アルジェリア高速道路で共同企業体を組む大成建設は、持ち分が鹿島と同じで巨額の損失リスクを抱える。しかし、大成は海外工事受注額が他社より大きかったものの、08年度にドバイ関連など損失を一括計上。その後は拡大路線を縮小し、海外土木の受注を減らしている。

また建築主体の清水建設は、ドバイで人工島のコンドミニアム建設などを受注。ドバイ危機時に損失リスクを指摘された。だが物件は完成し、出来高の支払いもほぼ済んでおり、巨額損失計上の見込みはない。非上場の竹中工務店も、ドバイの空港拡張計画で仕上げと設備工事を受注したが、引き渡し済みで損失はない。

このため焦点は、鹿島と大林がドバイの巨額損失処理を09年度決算で実施するかどうかだろう。

鹿島は3月9日、大型商業ビル「秋葉原UDX」を保有する特別目的会社への出資分を一部譲渡すると発表。09年度決算で約170億円の特別利益を計上する。期間利益とUDX等の売却益を合算し、海外損失の一部を引き当て計上すれば、通期で2期連続の最終赤字を回避できる。そのため09年度中に損失処理する可能性が高まっている。大林も同様に資産売却などを進めれば、ドバイ損失を処理しても、最終赤字転落は避けられそうだ。

大手ゼネコンを取り巻く環境は来期も厳しい。不況で手持ち工事は官民とも続落。海外受注も急増は見込めず、年間受注高は四半世紀ぶりに1兆円を割る公算が大きい。不動産収益改善も期待薄。採算度外視で海外の仕事を奪い合う轍は踏まず、国内の需要回復をじっと待つ縮小均衡以外に道はないのが現実だ。

(古庄英一 =週刊東洋経済2010年3月20日号)

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