欧州国際急行「TEE」、環境対策で驚きの復活構想 長距離列車の復権進む中で「21世紀版」構想浮上

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21世紀においてバージョンアップされた「TEE2.0」は、以下のような旅行手段をめぐる環境変化を受けてコンセプトが策定された。

・「飛び恥」の言葉に代表される気候変動問題への関心の広がり
・高速鉄道網の成長による所要時間の短縮
・幹線上にある中小都市への往来手段の確保の必要性
 (ドイツ連邦経済エネルギー省資料による)

温暖化対策に人々が関心を寄せるようになったのは、スウェーデンの若き環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの存在も大きかった。

彼女が提唱したFlygskam(飛び恥)運動は、欧州各国が厳しいCO2排出量の削減が求められる中、運輸当局が意識せざるをえない訴えとして受け入れられるようになった。市民レベルでも、環境負荷のかかる行為に対する行政による制裁的な課金などが進められた結果、今や市民の間にも十分に理解が広がったと言ってよい状況となっている。

「TEE2.0」は、このような環境問題への関心の高まりに対する鉄道業界からの発信の機会であるという。

どんなルートを想定している?

「TEE2.0」では高速鉄道網を利用し、1つの列車が最低3カ国を直通すること、現在は直通列車がない区間に設定することを基本としている。これまでに伝えられている構想によると、ドイツ政府が青写真として描いた運行区間は以下の通りだ。

【昼行列車ネットワークのプラン】
TEE1/2:パリ―ブリュッセルーケルン―ベルリン―ワルシャワ
TEE3/4:アムステルダム―ケルン―バーゼル―ミラノ―ローマ
TEE5/6:ベルリン―フランクフルト―リヨン―モンペリエ―バルセロナ
TEE7/8:アムステルダム―ブリュッセル―パリ―リヨン―バルセロナ
TEE9/10:ベルリン―ミュンヘン―インスブルック―ボローニャ―ローマ
TEE11/12:パリ―ストラスブール―シュツットガルト―ミュンヘン―ウィーン―ブダペスト
TEE13/14:パリ―ブリュッセル―ハンブルク―コペンハーゲン―ストックホルム
TEE15/16:ストックホルム―コペンハーゲン―ベルリン―ミュンヘン

すでに具体的な列車番号が付けられているほか、例えばTEE1はパリ北駅9時00分―ベルリン16時15分―ワルシャワ21時45分着などと、ダイヤの案まで策定されているのが興味深い。

これらの列車は一気に運行開始するのではなく優先順位が設けられており、TEE1~8が短期的な目標、9~16は現在建設中の大型プロジェクト(橋やトンネル、都市部の駅施設地下化など)が完成し、インフラの供用が始まってから実現するという条件が付いている。

TEE2.0のルート図。左がTEE1~8、右がTEE9~16を示している(画像:Bundesministerium für Verkehr und digitale Infrastruktur)

運行についてはTEE運行会社を新たに設けることを想定しており、ドイツ政府の資料では例としてDB(ドイツ鉄道)やSNCF(フランス国鉄)による新会社設立のほか、そこに他国の鉄道会社が加わる例が示されている。

かつてのTEEは「当日に目的地に到達できる昼行列車であること」と基準が決められていた。「TEE2.0」でもこの基準が準用されるが、これに加えて夜行列車の運行も想定している。

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