理研がベンチャー出資、「数学」で世の中を解析 「数学は万物の根源」、理論とデータをつなぐ

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理研数理は企業・社会を分析するための数理モデルの研究開発をベースに、コンサル、サービス開発、データプラットフォームの構築などを受託する。

経営を担うのは、JSOLの江田哲也社長。江田社長は5年ほど前から、理研との共同作業による金融関連システムの構築を図ってきており、まずはその実用化を目指す。「金融データ解析でも、生命科学など別の分野の統計解析手法を使うことで新しいものが見えてくる」(江田社長)。

5年後には常時10~20案件を扱い、年間売上高5億円が目標。当面はJSOLの得意分野である自動車、製薬業を中心に顧客開拓を図るが、理研が得意とする他の分野や、開発途上で生まれた新たなアイデアも事業化していく。

マスクの素材・形体開発も検討

将来は今回のコロナのような感染症の感染拡大予測やそれによる経済予測なども可能にしたいという。また、理研の持つ生命科学、人間工学、材料工学などさまざまな技術と解析手法やスーパーコンピュータ富岳を用いてデータ解析し、より効果的なマスクの素材・形体開発といったことも期待できそうだ。

同社では研究開発のアドバイザーとして、初田哲男理研数理創造プログラムディレクターや同プログラム顧問の若山正人東京理科大学副学長らを迎える。案件ごとに理研、JSOLのメンバーでチームを構成し、委託する形態を取り、できる限り固定費を抑える。江田社長自身もJSOLのデジタルイノベーション事業本部長を兼務する。

とはいえ、理研数理を高収益企業として育てることが第一目的ではない。「アカデミアと産業界の研究者、技術者が(理研数理という)共通のプラットフォームで協業し人材環流を行うことで新しい価値を生み出し、21世紀後半での科学イノベーションの新しいモデルを提供したい」(初田氏)と、あくまで科学と産業の融合を目標とするところ、理研らしいといえそうだ。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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