「MAZDA3」発売1年、挑戦の稔が見えた通信簿 「引き算の美学」と「SKYACTIV-X」の成果

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ただし、フィーリング面での美点は、少しマニアックかもしれない。運転感覚にはガソリンエンジンならではのよさはあるのだが、誰にでもストレートに感じられるかといえばそれは難しく、玄人向けと言える。たとえば、自然吸気エンジンに対するターボエンジンのような、わかりやすい違いはない。

さらに、実燃費も通常のガソリン車に対して15%ほどよくなる感覚だが、60万円以上ある通常のガソリン車との価格差を考えると、メリットとしては薄い。総合的に判断すると、車両価格に見合う価値を体感できるかどうかは難しいと言わざるを得ない。

技術水準は高いし、実用化したマツダの心意気には拍手を送りたいが、商品として考えた場合には価格は大きなハードルとなる。

CX-30があってこそできたチャレンジ

MAZDA3は、国内販売のスタートから1年となる2020年5月末までに、日本で3万3408台を販売した。月販目標台数を2000台と設定していたので、ほぼ見込み通りの販売台数といえるだろう。それ以降は、6月が1188台、7月が1500台、8月が1658台、そして9月が2276台と若干の減少傾向もあったが、まずまずの結果を残していると言える。

ところで、MAZDA3を語るうえで欠かせないのが、2019年10月に発売されたクロスオーバーSUV「CX-30」だ。

CX-30(写真:マツダ)

同車はMAZDA3と同じメカニズムで作られ、並行開発された兄弟のような存在。昨今はファミリーユースとしてもSUVを選ぶ人が増えており、CX-30もその受け皿となっている現状がある。とくにMAZDA3のハッチバックは、CX-30という実用性の高い兄弟の存在があったからこそ、思い切ったデザインに振ることができたと言えるだろう。

事実、CX-30は月販目標台数を2500台としており、実際の販売台数もMAZDA3より若干多い。デザインよりも実用性の高さを選ぶユーザーは多いのだ。しかし、その差はあくまでも“若干”という程度。SUV人気が高い中で、MAZDA3は大健闘と言えそうだ。

MAZDA3がもたらしたもの。それは万人向けのクルマ作りからの脱却した理想の追求であり、美しいデザインやこだわりのパワートレインはそんなマツダのチャレンジングスピリットの具現化なのである。

工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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