空手道のヒーローが上回った理由には、映画版のダニエル役とジョニー役の2人の役者がそろって続投したことが大きく影響しています。
80年代の当時をダニエルとジョニーが振り返るシーンで映画『ベスト・キッド』の映像が頻繁に流れるのですが、青年が中年になったビフォーアフターを見比べる興味以上に、本人だからこそ年輪を重ねたことに生々しさを感じるのです。
「ぬぐいきれない悔しさ」や「いまだ残るライバル心メラメラ」の気持ちの込め方にも説得力が増します。だから「そうか、ダニエルは、ジョニーは、実はあんな気持ちでいたのか」「そんなサイドストーリーがあったのか」と感情移入を容易にさせ、人気を得ているのです。
ドラマ版もソニー・ピクチャーズ・テレビジョンが製作を担ったことで、映画版のアーカイブ映像からミヤギ先生とダニエルの感動の未公開シーンまで盛り込まれています。往年のファンに向けたサービスショットとしてだけでなく、知らない世代には背景がぐっとつかみやすい。そんな効果を作り出していることにも感心です。
負け犬ジョニーが「情け無用」の空手道場で再起を図る
そもそも一般的にリブート版は往年のファンと同時に、新世代ファンの両層を獲得できることに大きなメリットがあります。ただし、往年のファンの期待を裏切らないものを作ることが必須条件。ハードルは必然的に上がります。これまで30年にわたって『ベスト・キッド』のリブート版などの企画が多方面で立ち上っていたようですが、今回の『コブラ会』以上に役者2人が納得できる脚本とタイミングはなかったとか。
つまり、ダニエルとジョニーが50代になったことで成立するストーリーで、なおかつリブートでありながら新しい視点があるのが『コブラ会』なのです。
その新しい視点とはダニエルだけでなく、ジョニーの視点も重視されたことを指します。昔ながらの「正義がダニエルで、悪がジョニー」という対立構造ではなく、「ジョニーが1984年の少年カラテ選手権大会の出来事をどのように見ていたのか」「なぜ悪の道の空手を選んだのか」など本質論で解き明かしていくのです。
登場シーンのジョニーの負け犬っぷりは悲惨そのもの。そんな彼が再起をかける場所に選んだのが「情け無用」を掲げる空手道場「コブラ会」でした。理由を知れば知るほど、応援したくなり、彼の償い方を見届けたいがために見進めていくことになるでしょう。
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