女子高生の「かわいい制服」が管理を駆逐した訳 「社会への心構え」「集団のシンボル」は昔の思想
1972年開校の北海道札幌北陵高校は、周辺の札幌南や札幌西などの制服自由化の流れが及ばないように厳しい指導が行われていた。学校史の開学当初の記述である。
「本校の開校当時は、学園紛争こそ下火になったとはいえ、服装自由化を中心とする諸要求闘争が相次いでいた。新設校として制服問題に如何に対処するかは大きな課題であった。新しい学校づくりは、全校生徒の一致協力の形で進められなければならない。集団の一員として帰属意識を常に保たせるための制服の効用は見逃すことはできない。さりとて、遠からぬ将来自由化問題が起きるようでも困る。若人らしく、機能的で生徒が好んで着用できる制服をということで、男子はマリンブルーのブレザーにグレーのズボン、ワイシャツにワインカラーのネクタイを制服とし(略)」(同校ウェブサイトの沿革)。
管理されているという受け止め方は希薄
だが、1980年代後半以降、制服モデルチェンジが広がるなかで、管理という考え方が薄れていくように思えた。生徒側にこと制服については管理されているという意識がほとんどないからだ。学校は制服を変えるとき、少なくとも生徒目線に立っていた。「生徒が着たい」デザインを優先させたのである。そのためにファッションショー、人気投票などを行っている。
1970年代までは多くの学校で制服デザインはトップダウンで示されていた。生徒が制服を選ぶという考え方は、1950年前後、新制高校が誕生したころに少なからず見られたが、それ以降、生徒会から部分的な修正要望に応じることはあるものの、制服モデルチェンジで生徒の意見を採り入れるという発想があまりなかった。
ところが、少子化への対応あるいは進学実績を高めて「名門校」に生まれ変わるためには、生徒に選ばれる学校づくりが必要となり、そこでは、生徒に選ばれる制服を意識せざるを得なくなった。どんな制服か。俗っぽい言葉でしか言い表せないが、かわいい、かっこいいデザインである。制服モデルチェンジで紹介した学校のコメントが、それを象徴的に物語っている。
「生徒は自分たちがかわいい服を着ることに誇りを持ち、学校を好きになっていきます」
(品川女子学院)
「入学した女子にアンケートをとったところ制服がかわいいと、とても評判が良かった」
(北海高校)
ここでは管理されているという受け止め方は希薄であり、かわいいものを着ているという意識が強い。教師からすれば、かわいい制服を嬉しそうに着ている生徒に学校が好きだと言われれば、厳しく管理しているという感覚はなくなるだろう。
制服の思想において、かわいいという生徒の感受性が、指導という名の管理を駆逐してしまった瞬間だ。
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