小中学校「30人学級」人数減の本当の意味と効果 少人数学級30年ぶりに議論が動き出したワケ

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教育現場にとって長年の課題だった「少人数学級」が実現に向けて動き出した。小中学校全学年にわたる学級規模の全面的な見直しは、1980年から91年にかけて実施された定数改善以来。なぜ今、約30年ぶりの全学級定員削減に動き出したのか。これまでの経緯を振り返りながら、少人数学級の意義を探った。

少人数学級導入の機運が新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに盛り上がっている。政府が一斉臨時休校を要請した今年3月2日から、全国で緊急事態宣言が解除された5月末までの間、多くの小中学校が休校となり、再開後も感染防止策を講じながらの学校運営が続く。

だが、現在の40人学級では、児童生徒の密を回避するのは難しいとして、全国知事会などが少人数学級の実現を国に要望。教育研究者有志も、まず30人学級、さらに20人程度の学級への速やかな移行を求めるオンライン署名活動を始めた。自民党の教育再生実行本部も30人以下の少人数学級のために義務教育法改正を求める決議を採択して「30人学級」を軸に議論が進んでいる。

この問題は、安倍晋三内閣が設置していた教育再生実行会議でも今年7月に取り上げられ、初等中等教育ワーキンググループは「ポストコロナ期も見据え、令和時代のスタンダードとしての『新しい時代の学びの環境の姿』」として、少人数学級導入に向けた議論を進めることで合意した。この方針は菅義偉内閣にも引き継がれ、文部科学省も体制整備費の来年度予算要求を決めるなど、動きが加速している。

新型コロナで注目される少人数学級

小中学校の学級規模は、これまで徐々に引き下げられてきた。1959年の第1次義務教育諸学校教職員定数改善計画で50人とされた公立小中学校の学級編制(1学級の児童生徒数の上限)の基準は、64年から68年まで実施の第2次計画で45人、80年から91年までの第5次計画で40人となった。

だが、その後は、一律の学級規模削減ではなく、政策目的に応じて教職員数を上乗せする加配定数の拡充が進められ、教職員配置について地方の裁量が拡大された2000年代には、自治体が独自に臨時教職員を任用して少人数学級にする動きが広がった。

全面的な学級編制見直しの議論は、少人数学級導入を掲げた民主党政権下で再開される。11年度には、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」が改正され、小学1年に35人学級を導入。12年度には加配措置により、小学2年でも35人学級が実現した。さらに35人以下の学級を小中学校全学年に拡大する計画案もあったが、政権交代もあって頓挫。その後は14年に小学1・2年を40人学級に戻すことを財政制度等審議会が提案するなど、少子化に合わせて教職員数の合理化を目指す財務省の圧力が強まっていた。

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