通勤電車、いまこそ「有料座席」を増発すべきだ 収益改善と密回避、鉄道会社・乗客双方に利点

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通勤ライナーの定義にはいろいろあるが、本記事では通勤客向けとはいえ特急料金を支払う特急列車は除外することにする。

JR各社では国鉄時代から特急型車両の間合い運用として「ホームライナー」が続々登場していたが、1986年に運行開始したJR東日本「湘南ライナー」では、特急列車と普通列車の双方に使うことを想定した185系を起用。首都圏における通勤ライナーの代表格になった。

JR以外の首都圏の鉄道事業者では、1992年から京浜急行電鉄が運行を開始した「京急ウィング号」がパイオニアとなる。ただし車両は2ドアクロスシートの2000形や2100形に限定しており、湘南ライナーに近い位置付けである。

一方2008年に東武鉄道東上線に登場した「TJライナー」は、4ドアの通勤用車両50000型をベースに、ロングシートとクロスシートを切り替えできるデュアルシートを備えた50090型を起用し、TJライナー以外では特別料金不要のロングシートとして走らせた。

車両運用の効率化が図れ、きめ細かいサービスが提供でき、収益性向上も期待できるデュアルシートは、とりわけ首都圏の鉄道事業者に影響を与えた。

西武や京王にも登場

西武鉄道では新設計の40000系を使った「S-TRAIN」を2017年に導入。池袋線から西武有楽町線を経由して東京メトロなどに乗り入れている。同じ40000系は翌年には新宿線系統の「拝島ライナー」での運用も始まった。

拝島ライナーが走り始めた2018年には、京王電鉄が同社初の座席指定列車でもある「京王ライナー」を、専用設計の5000系とともに導入した。

1両だけオレンジ色の外観が目を引く東急電鉄の「Qシート」車両(筆者撮影)

S-TRAIN・京王ライナーともに休日は観光列車として、通勤列車では乗り入れない西武秩父や元町・中華街、高尾山口駅に乗り入れており、東武50090型はクロスシートのまま料金不要の「川越特急」としても走っている。

JR東日本普通列車グリーン車のように、列車の一部を座席指定のクロスシートとした事例もある。首都圏では東急電鉄が大井町線・田園都市線直通の急行列車にデュアルシート車両を1両組み込み、2018年12月から平日夜に大井町駅を発車する一部の急行長津田行きで有料座席指定サービス「Qシート」を始めた。

コロナ禍での感染防止という観点から言えば、転換クロスシートはもちろんデュアルシートでも、一部分を除き進行方向を向いて着席し移動するので安全性が高い。しかも利用者が減少しているので、乗車定員の少ない車両を入れても、混雑がひどくなるなどのデメリットは生まれにくい。ウィズコロナの時代に合ったサービスだと思っている。

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