「新宿線―東西線直通」へ、西武社長の意気込み ダサイタマ返上、「プライドを持てる路線に」

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――そのような状況を踏まえて、新たな鉄道のあり方とは?

鉄道会社としてはお客様に電車に乗っていただかないと困る。そのためにコロナ対策をしっかりと行うことが第一だが、次に行うべきことはお客様に出かけてもらうことだ。今年は多くのイベントや行事が軒並み中止になっているが、今後復活するときに、いかにそれを魅力的に見えるようにして、お客様に「行ってみたい」と思っていただけるようにするか。待っているだけではお客様は電車に乗ってくれない。出かけたくなるための動機づけが必要だ。

――具体的には?

約270億円を投じて所沢駅に商業施設「グランエミオ」を9月2日にグランドオープンし、駅の改造もした。こうした取り組みはほかの鉄道会社さんはすでにやっていることだが、当社でも遅ればせながら、駅に新たな魅力を作りたいと考えた。所沢には当社グループの球場や遊園地もあり、これらもリニューアル中だ。

9月2日にグランドオープンした「グランエミオ所沢」の開業式典(記者撮影)

地元のコミュニティや自治体ともっと協力していきたい。地元ではお祭りやイベントなどいろいろなことを考えているはずだ。沿線の隠れた魅力を引き出して、ほかの鉄道会社の沿線からどんどん訪れてもらえる仕掛けを作りたい。

今までは、都心により近い場所に住居を求める人が多かった。都心に近い場所に住むことのメリットは否定しないが、テレワークの進展で住居選びの基準が変わる。勤務先に近い都心ではなく、ゆったりと過ごせる郊外を選ぶ人が増えるはず。そこが当社にとってチャンスだ。

今までは他社線から住み替えてもらうことがあまりやれていなかった。西武鉄道は、他社に比べブランド価値が弱いところもある。郊外を選ぶといっても、「そうはいってもね」というところがある。それが逆にチャンスとして捉えられると思う。

西武線のメリットを提供しなければ

――ブランド価値が弱い?

先日のグランエミオのオープン時に所沢市の藤本正人市長が、「自分たちが住む街にもっと自信を持ってほしい」と発言した(「『ダサイタマ』返上なるか、西武、埼玉戦略の行方」)。確かにそういう部分があるのかもしれないが、それはわれわれ自身にも責任がある。他社線に住む人が、「どこに引っ越そうか」となったときに西武線沿線を選んでもらえるメリットをわれわれが提供しないといけない。

西武沿線の良さとは何かと問われたとき、「自然が豊富で緑が多い」「のどかな感じ」「庶民的」という声が上がる。だが、それだけで他社から乗り換えてくれるほど甘くはない。他社より優れた要素を抜き出して、それを研ぎ澄ませていかないと生き残れない。かといって、鉄道会社の知恵だけでできるほど優れたものが当社にあるわけではないので、地元に目を向けて、沿線の自治体としっかり連携する。

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