コロナ禍の株投資「儲けた人と損した人」の大差 運用成績はプラス39%、マイナス32%で拮抗

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コロナ禍の中で生き方を見つめ直し、投資を積極化した人もいる。

30代男性は最近、地方で暮らしていた祖母を亡くした。男性の父が看取ったが、病院ではコロナの影響で面会が制限、東京からの移動もままならなかった。父の様子を見聞きし「時間は有限だと感じた」と話す。体力のあるうちに限られた人生を全力で過ごすため、投資によって経済的に自立し早期退職を目指すとの思いを一層強くしたそうだ。

投資を積極化した理由は、目先の収入減を補うためという声も多い。「コロナで仕事が休業に。観光業なので収入が減ると思った」(30代女性/会社員)、「コロナ禍でパート先のシフトが減らされた」(40代女性/パート)など、切実な内容だ。

試される投資スタンス

アンケートでは、年初から直近までの含み損益を含めた運用成績も尋ねた。回答者のうちプラスの人は39%、マイナスの人は32%でほぼ拮抗している。

「大幅下落した株価が戻り始めているのに、やらないの?」という妻の言葉に背中を押され、投資を始めた30代男性。日本株のほかに、「Zoom」を運営するアメリカのズーム・ビデオ・コミュニケーションズの株などコロナ禍で株価の上がった銘柄を保有するが、運用成績はマイナスだ。

理由としては、投資スタンスがまだ定まっていないことが挙げられそうだ。男性は、「大きく下がったタイミングで売ってしまったとか、もっと上がるかなと思って買ったら下がったとかでマイナスになっている」と説明する。

この男性のようにアメリカ株に狙いを定めた個人は多い。そのような人にとって気が気でないのは9月に入ってからのハイテク株下落。だが投資歴35年、現在は定年後生活を送る60代男性は、「足元の下落は調整。5年後に上がっていればいい」と鷹揚に構える。

強がっているだけでは、と一笑に付せない。なぜならこの男性は、20年以上前からアップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトに投資し、資産を増やしているからだ。

長期的に成長が見込める企業であれば、足元の利益が赤字でも投資している。コロナ禍の今、目を付けたのは、テレビ動画配信プラットフォームのROKUや、企業向けID管理システムをクラウドベースで提供するOKTAといった企業だ。ともにアメリカのナスダック市場とニューヨーク証券取引所に上場している。

アンケートでは、「株の売り時については悩む」(30代女性/専業主婦)など、初心者共通の悩みが多く寄せられた。これに対する60代男性の解は、「『株価』を買っていると、安く買って高く売ることに気をとられる。企業の将来性や成長を買え! その結果として資産を増やせる」。覚えておいて損はない言葉だ。

『週刊東洋経済』9月26日号(9月19日発売)の特集は「コロナ時代の株入門」です。
緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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