ゴールドマン躍進支えるCEO「超非常識」な素顔 趣味はDJとヨガ、金融界に新しい風を吹き込む

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3月にニューヨーク市がロックダウン(都市封鎖)されたとき、ソロモンは直ちに4万人の従業員の大半をリモートワークに移行させ、自宅勤務用に何千というモニターや固定電話システムを惜しみなく確保した。ソロモンはさらに、ビデオ会議ツールの「ズーム」で顧客と何百回と対話し、ゴールドマンはこの困難を乗り越えられるようにしっかりとお手伝いさせていただく、何から何まで手数料を要求するわけではない、と言って顧客を安心させた。

すばやいリモートワークの採用は、第1・第2四半期に活発化した金融市場の波に乗ってトレーディング部門が大きな利益を上げるのに役立った。業務の混乱を最小限に抑え、従業員の忠誠心が高まる中、ゴールドマンの株式・債権トレーディング収入は近年では記録的な水準となった。

社内にこれまでとは違う風吹き込む

対するJPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカは当初、バックアップ拠点の立ち上げに手間取り、トレーディング部門の従業員がオフィスに出勤しなければならないというプレッシャーを感じるような空気をつくり出してしまうこともあった。

「デービッドはコロナ禍にうまく対処している」。こう語るのは、ヘッジファンドのキングストリートのパートナーで、以前はゴールドマンでトレーディング部門の幹部を長年務めていたジャスティン・メリックだ。

メリックはリモートワークに関するゴールドマンの柔軟な方針に加え、自身が顧客として提供を受けたゴールドマンのアナリストらによる情報と分析を高く評価した。その一方で、人材の厚みについては懸念があると話す。ソロモンがCEOに就任して以降、少なくとも6人のシニアトレーダーがゴールドマンを去ったからだ。

ゴールドマンの従業員の半数近くは30歳未満。ソロモンが発するメッセージは、変わりゆく金融業界の動きとも波長が合っているように見える。ヨガを実践し、音楽を愛するソロモンは、すでに社内の古臭いドレスコードを廃止し、「ありのままの自分」で仕事をすることについて語るなど、金融の仕事にこれまでとは違う風を吹き込んでいる。

経営者としてゴールドマンのコロナ対応を進める中で、ソロモンは思いがけずウォール街のソフト路線を象徴する存在にもなりつつある。生き馬の目を抜くウォール街にあって、ソロモンが象徴するソフトなウォール街では利益よりも個人の健康や幸福が優先され、不安を見せることも恥とはならない。

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