しかし、この皆婚にしても、全員が個人の強い意思や行動力によって実現されたものではありません。日本の皆婚社会を実現したのは、社会的な結婚お膳立てシステムといわれる「お見合い」によるところが大きかったからです。
出生動向基本調査における、初婚の夫婦の結婚のきっかけの推移をみると、戦前は約7割の結婚がお見合いによって成立していました。その後、徐々にお見合い結婚比率は衰退し、1965年あたりで恋愛結婚と並びます。注目していただきたいのは、1980年代後半に、お見合い結婚比率は25%まで落ち込む部分です。
お見合い比率は激減していく
仮に、1985年以前も25歳以上の未婚男の童貞率が25~30%で推移していたとしましょう。1980年代までは、このお見合いによって、恋愛未経験の3割の未婚男性たちは「結婚」という形で救済されていたと考えられないでしょうか。もちろん、お見合い結婚の男性が、すべて性体験が無い男たちだったとは断言できませんが、お見合いによって初めて恋愛をし、性体験をし、結婚したという男性がいなかったわけでもないと考えます。
その後、お見合い比率は5%台まで激減します。直近の25~34歳の未婚男の童貞率は29%ですが、彼らがアラフィフとなる20年後には、男の生涯未婚率(50歳時未婚率)は約30%になると推計されています。数字のつじつまは合っています。
自由恋愛を謳歌できるのは、3割の恋愛強者男女に限られます。残り7割のうち4割はそれでも過去に恋愛経験はあります。が、一度も恋愛経験のない層が3割存在し続けていることも事実です。そして、それは決して若者の問題だけではありません。「イマドキの若い奴は……」という言葉で片付けてしまうと、むしろ本質を見誤ります。
未婚化や非婚化は、若者の草食化というより、お見合いなどの社会的なお膳立ての消滅によって、もとから存在した恋愛未経験3割がそのまま40代以上となって可視化されたのではないかと思います。変化したのは若者の個人の意識や資質ではなく、社会環境のほうだという事実認識を持つことも大事でしょう。
人は自分が苦労せずできることは、他人も当たり前にできると思いがちです。できない者がいれば「それは努力不足だ」と断じる人もいるでしょう。しかし、自分が泳げるからといって、泳げない人を無理やり水深のある川に引き込めばどうなるでしょう?自力で泳ぐだけが川を渡る方法ではなく、そのために舟を作り、橋を架けることが社会の役割なのだと思います。
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