安倍政権が「トランプ再選」を熱望している理由 政権与党は歴史的に共和党大統領を好んできた

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日本はつねに共和党の大統領を好んできたわけではない。1960年代には多くの日本国民が民主党のジョン・F・ケネディ大統領を慕っていた。一方で1970年代になると、日本への相談もないままに中国との関係を構築し、米ドル紙幣と金の兌換を突如として停止したことによって一夜にして円高を引き起こした1971年の「ニクソンショック」が主な要因となって、ほとんどの日本人が共和党のリチャード・M・ニクソン大統領のことを嫌っていた。

共和党のロナルド・レーガンが1980年に大統領に選ばれると、「元映画俳優に世界で最も強力な国の指導者が務まるのか」と多くの日本人が公然と疑問を抱いた。しかし、中曾根康弘首相はレーガンを非常に巧みに扱えることが判明した。1980年代中頃にアメリカ通商代表部で働いていた私はそれを自ら目の当たりにしている。

それに加えて、共和党は、「保護貿易論者の労働組合によって支援されている民主党こそが両国間の通商における対立の主要因である」と日本をうまく説得した。元副大統領であるウォルター・モンデールがレーガンの対抗馬となった1984年の大統領選挙の頃までには、日本の指導者層は民主党よりも共和党のほうがより日本の利益にかなうという結論を下していた。その理由は何なのだろうか。

共和党には安心感と親しさを覚える

第1の理由として、1950年以降、中でも冷戦期においては、共和党と自民党はそのイデオロギーにおいて互いに近しい存在であったことが挙げられる、両党は共に反共産主義、反労働組合、大企業優遇、軍事重視、エリート層重視、そして文化的に保守的である。

第2の理由として、レーガンが1980年に大統領に選ばれてからバラク・オバマが2008年に大統領になるまでの28年の間に、共和党が20年もの間政権を担っていたのに対し、民主党は8年間しか政権を担わなかったということがある。連続性、安定性、予測可能性を好む日本の指導者層は、共和党に対しては安心感と近しさを覚える一方で、民主党との関係を深める必要はさほど感じなかった。

実際に、1950年代以降実質的な一党支配を享受してきた自民党は、アメリカで共和党こそが自民党に相当する「与党」であり、民主党はいつまでも「野党」であると考えるようになった。その考えは民主党が政権を握ったときも変わっていなかったようだ。

第3の理由として、共和党は自分たちを自由貿易の支持者として、民主党を保護貿易論者として説明してきたことが挙げられる。また、日本より中国を重視する「民主党よりも、自分たちのほうが中国に対して強硬な態度を取っている」と共和党は日本に伝えていることもある。

実際には、共和党の中にも保護貿易論者がおり、すべての民主党議員が中国を支持しているわけではないのだが、日本の指導者層はこうした共和党の説明を説得力のあるものとして見ている。

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