きさらぎ駅はアニメへの進出も決まった。裏世界ピクニックがTVアニメ化されると、3月5日に発表されたのだ。
裏世界ピクニックは、きさらぎ駅があるとされる遠州鉄道とタイアップした電車を走らせたこともある。コミックス版裏世界ピクニックの発売を記念した「車内広告ジャック」が一部の編成で2018年12月に実施された。現実世界には存在しないきさらぎ駅が、現実世界に影響や経済効果をもたらしているのは面白い。
ちなみに、裏世界ピクニックに登場するきさらぎ駅は、「はすみ」の話とはかなり異なる。きさらぎ駅には裏世界に迷い込んだ米軍が駐屯しており、やってくる列車は「ひどく古びた錆だらけの車体」あるいは「もっと見慣れた新しい感じ」の両方が見えるという。車内は「いつの時代とも知れない古びた客車」と描写されている(2巻では電車は1両だけと描写され、現実の遠州鉄道とはかなり異なる雰囲気である。ちなみにコミック版では遠州鉄道30形に似た車両となっている)。
アニメ版のきさらぎ駅では、どのような鉄道描写がなされるのか、今から楽しみである。
鉄道と非日常の接点
鉄道が非日常の体験や恐怖とつながっている創作はきさらぎ駅が初めてではない。それを最初に示したのは、宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』だろう。
初稿執筆が1924年と100年近く前の作品だが、「主人公の耳にアナウンスが流れ、強い光に包まれると、いつの間にか銀河鉄道に乗車している」「銀河鉄道に乗車している鳥捕りが、突然車内から消え、再び現れる」「天上でもどこでも行ける特別な切符」「既に亡くなっているけど、銀河鉄道に乗車している姉弟」「車窓に突如、親友の母が詰められた石炭袋が現れ、恐怖を感じる」など、超常現象と同時に恐怖心も描かれている。
また、1977年にまんがが連載開始され、アニメ化もされた『銀河鉄道999』は、オカルト的な話も多い。例えばアニメ第58話「足音村の足音」では、銀河超特急999号が、足音村に停車し、水滴の幽霊・やよいが主人公・鉄郎を連れて行く。第99話「四次元エレベーター」のように、不思議なエレベーターで不思議な街に引き込まれてしまい、ヒロインのメーテルがいつの間にか偽物となってしまう話もある。これは裏世界ピクニック内のエレベーターにも通じる描写である。
1980年の「ウルトラマン80」でも、第5話で主人公の矢的猛が最終電車に乗り遅れた後で、不思議な電車がやってくる回がある。矢的はこれが最終電車だと思って乗り込むが、それは乗客全員が眠る不思議な列車であり、四次元世界の駅に連れて行かれる。きさらぎ駅にも通じるホラー的な物語である。
鉄道が非日常とつながる乗り物である以上、これからも恐怖体験は描かれ続けるだろう。こんな鉄道趣味もあることを、楽しんでいただけたなら幸いである。
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