これまで30年以上にわたり名阪特急の主役を務めてきた“アーバンライナー”21000系に続き、新たな名阪間特急用車、80000系“ひのとり”が今春デビューした。“ビスタ・カー”に準じて広い視界を確保したという客室の居心地、そしてサービスはどうなのか。興味津々、営業列車に乗ってみた。
この日、僕を出迎えてくれたのは80000系の第3編成。インターネットで確保した席は最後尾6号車プレミアムクラスの1C席。どんどん過ぎ去ってゆく大和や伊賀の山並み風景を楽しもうという趣向である。
小田急ロマンスカーとは違う…
乗車してすぐ“しまった!”と思ったが、もう遅い。小田急ロマンスカーの最後尾をイメージしての座席選びだったが、腰掛はきちんと進行方向前向きにセットされている。2人掛け席の1人旅だから、他の人を巻き込んで後ろ向きに回転させることもままならない。失敗である。でもせっかくの初乗り。気を取り直して精一杯楽しむことにしよう……。
席が進行左側なので、すぐ横をすれ違う電車との比較による“高さ感覚”を味わうことができない。高安の車庫を通過する際、通路の反対側の窓から見える、たくさんの車両の屋根が目の下に見えたことで、ようやく高さを実感することができた。
大和川を渡ったところで、編成全体を観察するために前方へ散歩。前面の展望も味わいたい。運転室と前面の展望は運転士もデザインの一部に組み込まれているのではないかとすら思える。あくまでも使い勝手を重視し、整理整頓された機器配置のなかに、信頼感という美しさを見いだすことができる。
あまり長居すると、せっかく先頭車の座席を確保したほかのお客さんの迷惑になる。後ろ髪を引かれながら自席へ戻る。その途中、多目的トイレに寄ってみた。
用を足そうと思ったら、視界の端になにやら緑色の光が。文字を読んでみたら“カギをかけてください”と注意されていたのだ。施錠したら緑のランプが消えて“ロック中”になった。親切なことである。
点灯といえば、車両間を移動する時、扉が開くとともに通路が明るくなる。鴨居にLED照明が仕組まれているのだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら