おやじスポーツ、野球はこのまま衰えるのか 日本社会の縮図としての野球界

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なぜ、15年間でNPBはMLBにかくも差をつけられてしまったのか。理由のひとつに、MLBの巧みなマーケット戦略が挙げられる。

MLBは自国以外でもファンを開拓すべく、積極的な海外進出に打って出た。黒船の目指した先のひとつが、日本だった。

1995年に野茂英雄が海を渡ったことが大きなきっかけとなり、日本のスーパースターは総じてMLBを目指すようになった。そうした背景に加え、MLBにとって日本人の野球ファン層はちょうど狙い目だった。

たとえば、直近7年間に行われた日本シリーズのテレビ視聴率(関東)を年齢別に見ると、50歳以上男性が15.9%と圧倒的に高い(ビデオリサーチ社調べ。以下同)。反面、20~34歳男性は6.4%、同年代女性は3.7%と悲惨な数字だった(右グラフ参照)。

このデータから推測すると、野球を頻繁にテレビ観戦するのは中年や高齢者だ。アメリカでナイターが行われるのは日本時間午前中に重なり、定年退職を迎えた人にとって見やすい時間帯でもある。さらに言えば、イチローや黒田博樹、上原浩治、田澤純一が世界の大男たちに真っ向から立ち向かうストーリーは、実に日本人好みだ。

三木谷浩史の的を射た言葉

ほかにもMLBの巧みなマーケット戦略はあるが、詳細は他媒体を参照してほしい。むしろ本連載で目を向けたいのは、なぜNPBが成長できていないか、という点だ。

その理由をひもとくうえで、実に的を射た言葉がある。

2004年に球界再編騒動が勃発し、IT企業の楽天が新参入を決めた。その理由について、オーナーの三木谷浩史は球団発行の創業記『原点ノート』でこう明かしている。

「楽天があえて参入を決めた理由。それはある意味で、プロ野球界というのは日本社会の縮図であるという考えにもとづいていました。旧体制の仕組みのなかで、改革のエネルギーを失い、衰退しようとしている。『プロ野球は赤字で当たり前』だというようなことが球界内部の人の口から出るようになっていた。でも本当にそうなのだろうか? 楽天なりの新しい方法論を持ち込めば、健全経営を実現できると思ったのです」

プロ野球界は日本社会の縮図――。実に、言い得て妙である。

オーナーの言葉どおり、楽天球団は13年度に経営の黒字化を果たした。さらにグラウンドでは、創設からわずか9年間で日本一に登り詰めている。はたして新球団の成功は、球界の成功へとつながっていくのだろうか。

全5回にわたる当連載では、野球界の現状と未来に目を背けず、向かい合っていく。

(=敬称略)

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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