中国の株式市場は7月に入り、景気の本格回復への期待感から全面高の様相を呈している。7月9日の上海総合指数の終値は3450.59と、6月末と比較して15.6%も上昇した。
そんななか、気になるニュースが市場を駆け巡った。国有保険大手の中国人民保険集団(PICC)が投資家向けの情報開示で、同社の第2位の株主である全国社会保障基金が発行済株式の最大2%の持ち株を売却すると明らかにしたのだ。目下の株価水準で試算すると、その価値は約73億元(約1117億円)に相当する。
市場関係者の多くは、このタイミングでの売却公表について「最近の市場の過熱を抑えたい政府の意図が表れている」と見ている。あるアナリストによれば、PICCのA株は過大評価されてH株との乖離を説明できない水準になっており、それが今回の動きにつながった可能性もある(訳注:A株は上海・深圳の証券取引所で取引される人民元建て株式、H株は香港証券取引所で取引される香港ドル建て株式)。
「ナショナルチーム」と呼ばれる巨大基金
実際、PICCの株価は7月9日のA株の終値が8.25元(約126円)と、H株の終値の3.02香港ドル(約42円)とは3倍の開きがある。PICCの開示によれば、全国社会保障基金は同社株の売却を(市場での処分ではなく)入札または大口の相対取引で6カ月以内に行う計画だ。売却価格は市場外取引の状況をふまえて確定するという。
2020年6月末時点で、全国社会保障基金はPICCの株式を73億1500万株保有しており、そのうちA株が67億9100万株、H株が5億2400万株を占める。これらはPICCの発行済株式の16.54%に相当する。
全国社会保障基金は、中国社会の高齢化に備えて年金などの社会保障費を補うため、2000年に中央政府の財政資金や国有資産を投じて設立された。その背景や影響力の大きさから、市場関係者の間では「国家隊(ナショナルチーム)」と呼ばれている。2019年は市況回復の恩恵を受けて3000億元(約4兆5900億円)余りの運用益を上げ、総資産は2兆6000億元(約39兆7800億円)を超える。
(財新記者:呉雨倹)
※原文の配信は7月9日
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