グーグルが自社ブランド携帯を投入、広告拡大への試金石
携帯電話業界を揺るがすような衝撃はなかった。
米グーグルは5日、自社のアンドロイドOSを搭載した携帯端末「ネクサス・ワン」を発売。まずは米、英、シンガポール、香港の4カ国でネットを通じて販売し、順次拡大する。
「広告収入を原資に、端末を無料にするのではないか」。発表前にはさまざまな憶測が飛び交っていた。しかし高性能のCPU(中央演算処理装置)を搭載したほかは、特段のサプライズはなし。米本社での会見でも「業界を変革するにしろ、まずは参加しなければ始まらない」(グーグルのアンディ・ルービン技術担当副社長)と、控え目だった。
グーグルが見据えるのは、モバイル広告の市場。「ネクサス・ワンは5年前のノートPCにむしろ近い。ネットへのアクセスに優れ、広告への誘導にもつながる」(ルービン氏)。
携帯電話を通じたネットへのアクセスが拡大する中、「5年後にはネット広告の主役はPCから携帯端末に移る」(メディア戦略に詳しい慶應義塾大学大学院の岸博幸教授)との見方もある。
ネット広告の王者とて、モバイル市場での地位は盤石ではない。その戦略の核となるのが、2007年に無料公開したアンドロイドOSだ。グーグルのサービスに最も適するよう設計されたこのOSが携帯端末に普及すれば、広告収入の増加が期待できる。
アンドロイド搭載端末は発売予定も含めると、世界中で数十機種に上る。しかし、3000万台以上を出荷したといわれる米アップル社のアイフォーンと比べると、その差は大きい。