--自分の感覚が及ばない提案が出てきたときはどう対応されますか。
ある意味、マーケティングはサイエンスなので“Why”を5回くらい続けて聞けば提案にちゃんとしたロジックがあるかないかは見えてきますよ。
ただ、マーケティングはサイエンスとアートであると言われるように、ロジックではない部分も大切です。世の中にモノがあふれていて、多分もうお客様はモノを買いたいと思っていません。それでも気持ちを動かせるのは、新しい価値観や感動がある商品です。
ヒットした爽健美茶は、緑茶は家で作れるから家で作れないお茶を作ろうという考え方が出発点でした。世の中の変化分析はどこの企業もやっているので、提案には逆の発想や新しさが必要なんです。
--最後に、ストレス解消法をお聞かせください。
週末のゴルフと、家でしゃべることでしょうか。
消費財なので家庭で話しやすいというのもありますが、家内や娘に「今度の広告どう思う?」と聞いたりします。つまんないとかも言われますが(笑)、たとえばコカ・コーラに桑田佳祐さんを起用する件も、最後はうちの娘のひと押しで決まったんですよ。
僕は、「マーケティングは人生そのものだ」とよく言います。心を動かしたい、人を喜ばせたい、こんな価値を提供したい、そのためには自分は何が強みで何が弱みなのか、コミュニケーションはどうするのか。人生の中にそういったマーケティング的な発想を採り入れると、職場をはじめ、友達や奥さんとの間など、人間関係がいい方向に変わっていくのではないかと思っています。
(写真:田中庸介/アフロ)
日本コカ・コーラ株式会社取締役会長。1954年奈良県生まれ、同志社大学文学部卒業、米国コロンビア大学ビジネススクールにてMBA取得。77年ライオン入社、販売とマーケティング関連職を歴任。91年フィリップモリスの食品事業部門であるクラフト・ジャパン副社長、日本事業の統括責任者を務める。94年、日本コカ・コーラ入社、副社長コンシューマーマーケティングナショナルブランド担当。2001年社長就任。06年会長就任。08年NTTドコモ顧問就任。
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