東芝vsモノ言う株主、ガバナンスめぐる攻防戦 旧村上ファンド出身者が社外役員選任求める

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東芝の定款上の取締役上限は20人で、現状は12人だ。そのうち、社外取締役が10人、そのうち外国籍の取締役が4人いる。一方、エフィッシモは3人、3Dは2人の取締役候補を別々に提案しており、仮に東芝の株主総会で会社側、株主側の提案がそれぞれ可決されると、取締役は17人に増える。

だが、東芝は不正会計を経て取締役総数を減らし、代わりに外国人を増やして経営の機動性とメンバーの多様性を上げてきた。そういう自負があることを考えると、取締役数が増えるのは避けたいところだろう。小林氏は「取締役会の実質的かつ充実した議論を可能にし、東芝の事業内容や(再建計画である)『東芝ネクストプラン』の実行などを鑑みると、12人という取締役会の人数は適切だ」と言い切る。

突然の株主還元方針

さらに、株主提案がすべて認められると、東芝の意向に反対しそうな取締役が取締役会の過半を占めることを懸念しているとの見方も出ている。2019年の株主総会で社外取締役は7人から10人に増え、東芝の社内取締役は車谷暢昭社長CEOと綱川智会長の2人のみだ。増えた社外取締役には一部株主が推していたファンド出身者も入っている。

株主提案に反対表明した6月22日に、東芝は新たな株主還元方針も発表した。東芝が約40%を保有する半導体大手キオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)株を売却検討する方針を示し、同日の会見で車谷社長は「売却後の手取り金の過半は株主還元に充てる」と述べた。

それまでは、キオクシア株を保有し続けるとの観測も出ていただけに、突然の売却方針発表は唐突な印象だ。一部の大株主がキオクシア株を全株売却し、その資金で株主還元すべきだと圧力をかけた可能性がある。

東芝は不正会計とアメリカの原発事業の巨額損失で経営危機に陥り、その過程で複数の海外ファンドを割当先とする約6000億円の増資を実行した。その結果、経営破綻は避けられたが、海外ファンドが株主に占める比率は7割にまで高まり、現在でも6割超が居続けている。経営再建が順調に進み、東証2部から1部への復帰を目指そうとしている東芝経営陣にとって、こうしたモノ言う株主の存在が心理的な重しになっている。

エフィッシモは中長期で企業価値向上に努めるとしているが、東芝はいわゆる短期的利益を狙うアクティビストファンドとの見方を変えておらず、警戒心は強い。今回は反対表明した東芝だが、7月末の株主総会で多くの株主がどう判断するか。将来の東芝の舵取りを決める大きな試金石となりそうだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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