阪神「赤胴車」静かに引退、伝統塗装"最後の姿" クリームと赤の塗り分け、かつて特急で活躍

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引退直後の6月5日、尼崎車庫には解体を待つ赤胴車の姿があった。その前面についている連結器は、バンドン式と呼ばれる小ぶりなものだ。かつて阪神は全車にこの連結器を装備していたが、近鉄との直通運転を行うにあたって標準的なものに交換。一方で、武庫川線用の車両は改造されずに残っていた。今回の赤胴車引退は、日本の営業用車両からバンドン式連結器が姿を消すことをも意味している。

他社より小型なバンドン式連結器。阪神車の象徴だった(筆者撮影)

慣れ親しんだカラーリングの車両に乗り込むと、広告類や路線図がすべて取り払われた車内には昭和の雰囲気が残っていた。緑色の座席モケット、パイプを組んだシンプルな袖仕切り、アルミでできた窓枠。天井の蛍光灯やクーラーの吹き出し口も、いかにも昔の車両といった感じだ。

だが、その車内はきれいに保たれ、最後まで丁寧にメンテナンスが続けられていたことがうかがえる。

後継車両は「野球」がテーマ

この日は、阪神の関係者も記録用として赤胴車の写真を撮影。また、同工場のすぐ近くにある尼崎駅では、この赤胴車の入れ換えなどが行われることを期待して、数人の鉄道ファンがカメラを片手に待つ姿も見られた。ファンの一人は、「せっかくなので、最後に本線を6両編成で走る姿が見たかったですが、この状況下では仕方ないですね……」と、残念そうに話していた。筆者も最後にそうしたお別れ運転が行われることを期待していたので、その気持ちはよくわかる。

赤胴車に代わって武庫川線の“主”となったワンマン対応の5500系は、同じ西宮市内に阪神甲子園球場や鳴尾浜球場があることから「野球」をテーマに、4編成それぞれが異なるデザインとされた。阪神タイガースのキャラクター「トラッキー」や、床面にバッターボックス、ピッチャーマウンドが描かれている車両もあり、どれも個性的で楽しい車両となっている。

バトンを受け継いだ彼らが、末永く愛されることを願うとともに、赤胴車に労いの言葉を送りたい。

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伊原 薫 鉄道ライター

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いはら かおる / Kaoru Ihara

大阪府生まれ。京都大学交通政策研究ユニット・都市交通政策技術者。大阪在住の鉄道ライターとして、鉄道雑誌やWebなどで幅広く執筆するほか、講演やテレビ出演・監修なども行う。

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