阪神「赤胴車」静かに引退、伝統塗装"最後の姿" クリームと赤の塗り分け、かつて特急で活躍

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転機となったのは、阪神・淡路大震災が発生した1995年だ。被害を受けて多くの車両が廃車されたが、特急・急行用の代替車両はメーカーの事情でステンレス製となり、銀色に赤帯というスタイルに変更。普通用の代替車両も、青系統はそのままに上下を入れ替え、上半分がライトブルー、下半分が白となった。

その後、特急・急行用車両はこの普通用車両に準じて上半分がオレンジ、下半分が白となり、従来車両も徐々に塗装変更が進められる。

余談だが、特急・急行用車両の新色は、そのカラーリングが阪神タイガースのライバルである某プロ野球球団を想像させるとして、阪神の株主総会で変更の提案がなされたという逸話がある。なんとも大阪らしいというか、阪神ならではのエピソードだ。

武庫川線が最後になった 

2015年には本線用の特急・急行用車両で塗装変更が完了し、残る赤胴車は武庫川線用の2両編成4本のみとなった。

武庫川線は、その名の通り武庫川駅から武庫川に沿って武庫川団地前駅まで南下する、全長わずか1.7kmの路線だ。全線が単線で、最高速度は時速45km。武庫川駅から本線に乗り入れる列車もなく、昼間は20分間隔で同じ車両が行ったり来たりするだけの、都会の中のローカル線である。

7861形は片開き扉。一部の窓には保護棒が取り付けられている(筆者撮影)

ここに残っていた“最後の赤胴車”は、「7861形」が3編成と「7890形」が1編成。いずれも、昔は特急や急行として本線を快走していた車両である。

新型車両の導入で本線にいた“同僚”が次々と引退する中、ワンマン運転対応改造が施されたこの4編成は、ここでのんびりと余生を送っていた。特に、7861形は阪神で最後となる片開き扉の車両で、ファンからの人気を集める存在だった。

だが、製造から50年以上が経過し、彼らにも老朽化の波が忍び寄る。特に7861形は、扉や台車が他の車両と違うこともあり、保守部品の確保に苦労することが増えた。そのため、普通用の5500系を改造して武庫川線用にすることが決定。赤胴車は姿を消すこととなった。

阪神は、赤胴車を2020年5月末に引退させることをいったん決定。だが、新型コロナウイルス感染症が拡大したことを受け、5月下旬に「引退日を6月以降に延期する」と発表した。

結果的には、6月3日に5500系のワンマン対応車両がデビューし、赤胴車はその前日である6月2日の最終列車をもって引退。鉄道ファンにとっても、阪神社員にとっても、そしてなにより赤胴車にとっても、無念の結果となってしまった。

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