米サーベラス、西武IPOで窮地 売出し株数変更の可能性も
[東京 8日 ロイター] -西武ホールディングス<9024.T>の株式の新規上場(IPO)で、筆頭株主のサーベラス・グループ
関係筋によると、保有する西武HD株式の売り出し価格としてサーベラスが想定しているのは1株2000円以上。しかし、市場ではIPO価格がその水準を下回るとの予想が多く、サーベラスは売り出し予定株数の大幅削減などの条件変更に動かざるを得ないとの見方が出始めている。
西武は7日、「市場環境と諸般の事情」を見極めるため、仮条件の決定を2日延期し9日にすると発表した。
複数の投資家によると、市場の買い意欲がある水準は1株あたり2000円以下とみられ、西武HDのIPOを担当するグローバルコーディネーターが仮条件を想定価格(2300円)から大幅に下げる公算が高まっている。ある投資銀行関係者は、この結果、サーベラスは売出しの株数の削減という形で条件を変更せざるを得ない、としたうえで、その変更は「かなり大幅になる」と話す。
「出しても1500円」。海外に拠点を置くあるファンドマネージャーは、西武株の需要調査を行うグローバルコーディネーターの担当者に、こう伝えた。
西武HD株については、2020年の東京オリンピック開催や脱デフレへの期待から不動産市況が上向くという追い風を期待する声もある。しかし、「不動産銘柄として考えれば魅力的だが、グループの半分が鉄道では買い意欲は減退する」(ファンド筋)と突き放す投資家もいる。
西武HDの売上高のほぼ半分は鉄道事業。本来、虎の子とみられている不動産事業の売り上げは鉄道より小さい。IPO価格が想定通りの2300円で高止まりするなら、東京急行電鉄<9005.T>など他の鉄道株の方が割安なため、「西武を買う理由が見当たらない」(同)という。
売出しに応じない選択肢も
株価が期待より低ければ、サーベラスにとっては、無理に売出しに応じない方が賢明ともいえる。
サーベラスは、西武が2004年末に上場廃止になり経営再建を始めてから、1株あたり1000円前後で累計1000億円を超える投資を西武に行った。IPO価格が期待通りの水準に達しないとしても、再上場すれば、その後にマーケットで徐々に売却する選択肢も生まれる。
過去に両社は、売り出し価格で互いの言い値の格差が埋まらず、再上場を延期した経緯がある。昨年は西武社内のガバナンス体制をめぐって対立が表面化し、人材交流も一時停滞。関係は修復されたが、結果としてIPOに向けた準備の遅れにつながり、「アベノミクスで盛り上がった株式相場の波に乗り切れず、サーベラスは売りの好機を失ったのでは」(別の証券筋)との見方も根強い。
ある銀行関係者は、「今回は売り出しに応じなくても、とりあえずIPOして株価に値段がつけば、サーベラスとしてはエグジット(投資回収)の機会を確保しやすい。今さらIPOの延期というファイティングポーズは取らないようだ」と話す。
西武HDは売出価格を14日に決め、IPOは23日に実施する予定。東京証券取引所も承認しているとみられる。
東証が西武HDのIPOを承認した3月19日、西武HDはサーベラスが約5302万株(15.5%)の売り出しに応じ、IPO後のサーベラスの西武持分比率は19.9%に低下する予定と開示していた。
西武HDの広報担当者、サーベラスの広報担当者はともに、ロイターに対し一切のコメントを差し控えるとしている。
(江本恵美、安藤律子 編集:北松克朗)
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