足立区の「空き家活用」はここまで進んでいる 相談から利活用につながる例が出てきた

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ここまでの話を聞いて思ったのは公と民や建築と経営、運営など異なる分野が連携、融合した形で進めることが解決につながるということ。これが3つ目の成功の理由である。空き家利活用促進事業自体も住宅課とシティプロモーション課が連携し、情報発信にも力を入れて行われてきた。

どんなにいいことをやっても伝わらなければ意味がないが、これまでの役所の事業は伝える努力をしてこなかった。ところが足立区では現区長が就任した2007年以降、情報発信に力を入れてきた。

東京の空き家問題はこれからが本番

この事業にもその力が生かされた。ぱっと見て内容が伝わり、興味をそそるチラシが作られ、ホームページは頻繁に更新された。ネットができない層を意識し、ウェブでの発信と同時に折り込みチラシや冊子も用意するなど、できるだけ多くの人に伝える努力がなされた。

もともと、足立区には地元が好きで、地元のための活動をしている人、しようとしている人が多い。そうした人たちに広く情報が伝わった結果が数字に表れたのである。

写真左から足立区シティプロモーション課の舟橋氏、ハウスメイトマネジメントの伊部氏、建築家の青木氏、住宅課の増渕氏(筆者撮影)

課題もある。今回の事業は2019年度で終了してしまったのだ。今後も区ホームページなどで相談窓口として紹介するなどのつながりは維持されるそうだが、これまで以上の連携に発展するという話ではない。だが、せっかく生まれ、育った「足立モデル」をこのままにしていいのか。

というのは、東京での空き家問題の本番はこれからだからだ。現在の空き家問題は東京に定住した団塊世代の親の家の問題だった。地方の実家の問題だ。しかし、これからの空き家問題は団塊世代の家の問題になる。2020年現在、団塊世代は70~73歳。日本の男性の平均寿命は約81歳。そこから考えると今後数年の間に首都圏の空き家は一気に増大し始める。

空き家問題に限らず、世の中のすべての問題は大爆発する前に手を打っておくことが大事である。しかも、足立区はどうやら他自治体が見つけ得ていない有効な“武器”を手に入れている。

青木氏は事業終了後もこれまで同様にイベントなどを継続し、空き家利活用に邁進するというが、事業が終了したからと大事な武器を手放していいのか。せっかく使った税金をより生きるものにするためには将来を見ての判断が必要ではなかろうか。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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