足立区の「空き家活用」はここまで進んでいる 相談から利活用につながる例が出てきた
なぜ、これだけの結果を出すことができたのか。1つ目は公民連携がうまくいったことだ。寄せられた相談、通報に対し、区ではまず適切な管理を呼びかけ、さらに所有者の意向によって窓口を紹介する。
利活用したいとなればSPNEと情報を共有し、どういう利活用があるかを検討することになるが、ここでの情報共有ができるかどうかが大きなポイント。どの自治体でも空き家に関する相談や、通報は寄せられているが、それがSPNEのような実働できる組織につながっていないのだ。
早くから空き家問題に取り組んできた
区が入ることで空き家所有者から信用を得られた点も大きい。特に都内の空き家所有者は頻繁に営業を受けており、中には詐欺まがい、脅しに近いものもあって不動産関係者への警戒心が強い。だが区の事業ということであれば信頼までのハードルは一気に下がる。
「台風の後、ご近所からの連絡で瓦が落ちた空き家所有者に注意を呼びかけると、区からの注意ということで重い腰を上げてくださる方もいらっしゃいました」と、足立区住宅課空き家担当係長・増渕賢裕氏は話す。
面白いのは通報された物件がその後、利活用に結び付いた例があったという点だ。もともとは苦情から始まった通報が、間に区が入ることでトラブルに発展することなく、解決に至ったのである。近所からの直接の苦情が近隣トラブルの原因になる例が多いことを考えると緩衝となってくれる行政の存在は大きい。
足立区の場合は2011年に老朽家屋の適正管理について、2012年にいわゆるゴミ屋敷についての独自条例を策定しており、早くから空き家問題に取り組んできている。そのノウハウが生きたということであろう。
2つ目はいいビジネスパートナーと組めたこと。これには2つの意味がある。1つは地元に拠点を置く建築家が中心にいることである。
足立区が事業者を選定する際の選定委員を務めたハウスメイトマネジメントの伊部尚子氏は、「対象区域は古い地域で所有者も高齢者。外部から知らない人が来てその時だけ頑張っても、事業終了で縁が切れるようでは逆に地元は混乱します。プロポーザルでは外部の実績ある事業者の応募が目立ちましたが、やはり長く関わってくれる地元の事業者と組むべきと判断しました」という。
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