今、少人数の「家族葬」がじわり増えている理由 非常事態下、改めて見直される葬儀の価値
故人と親しい家族のみで葬儀を営む家族葬。参列者の減少などで葬儀の小規模化が進み、需要は年々増加傾向にある。そのパイオニア的存在が「家族葬のファミーユ」だ。
創業は2000年。これまでの葬儀を見直し、生活者の立場から必要とされるサービスを提供するとの方針のもと、打ち出したのが家族葬だった。その後、同業買収やファンドへの株譲渡を経て、ブランドと同じ社名の葬儀会社を中核とする持ち株会社、きずなホールディングス(HD)が2017年6月に設立、今年3月にマザーズに上場した。
創業者の高見信光氏から経営を引き継いだ中道康彰社長(53)はリクルート出身。1990年にリクルート(現リクルートホールディングス)に入社、子会社社長などを歴任した。
周囲ではキャリアップを目指し転職や独立起業をする社員も多かったが、中道氏はプロ経営者を志向。ただ「お世話になったリクルートと競合する会社は避けたい」。そこで選んだのが、未知の世界である葬儀業界だった。ちなみに、取締役の岡崎仁美氏もリクルート出身で、就職サイト「リクナビ」の編集長などを務めた人物。中道氏との縁もあり、きずなHDの経営陣に参画した。
結婚式だけじゃない、葬式にも多様な選択肢を
いち早く家族葬を手掛けたファミーユだが、他社も続々と参入。中道社長は2016年入社し、2017年に社長に就任したものの、当時は売上高が伸び悩んでいたという。「家族葬特化のポジションは戦略的に優れていたが、優位性が永遠に続くわけではない」(中道社長)。
新たな付加価値を提供すべく、始めたのがオーダーメード型の家族葬だ。中道氏が参考にしたのは結婚式だったという。1980年代のバブル期は大型式場で「ゴンドラに乗って、スモークを焚いて」という結婚式が人気。内容も画一的なものが多かった。
「それが時代とともに新郎新婦の要望を取り入れた個性的なものへと変化している。葬儀にも多様な選択肢があるのは当たり前」(同)。たとえば、散歩が日課だった故人を偲ぶため、散歩コースを目線の高さのカメラで撮影、動画で紹介する。釣りが大好きだった故人が残した魚拓を、個展のように葬儀会館内に掲げる、などである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら