出前館、「LINEから300億円出資」という一大勝負 ソフトバンク出資のウーバーイーツと統合も
LINEは2017年7月からデリバリーサービス「LINEデリマ」を展開している。これは受け付けた注文を出前館につなぐサービスであり、出前館の総オーダー数に占める割合は1割程度にすぎない。今回の増資実施後、LINEデリマは年内をメドに出前館に統合される予定だ。
出前館の社外取締役を務めているLINEの舛田淳取締役CSMO(最高戦略マーケティング責任者)は27日の説明会で、「業界のトップ企業を買収するのだということ」と説明している。
それではなぜいま、出前館はLINEから出資を受けるのか。2019年8月期の赤字は、期初に掲げた「大胆な成長投資路線」に則ったものだ。2016年に朝日新聞社と提携し、新聞販売店を配達代行拠点として活用することで、デリバリー機能を持たない飲食店もサービスの対象に加える「シェアリングデリバリー事業」を開始した。
会社の計画では、直営を含めて3年間でデリバリー拠点を500~600カ所に拡大。UberEatsなどライバルとの競争に勝ち抜き、2018年8月期比で売上高を3.5倍、営業利益を6倍にするはずだった。それを実現するために先行的に投資をし、その結果足元の業績は大幅に悪化するシナリオだったが、その後の売上高や利益は当初計画を大幅に下回っていた。
ウーバーイーツに追い上げられる
デリバリー拠点などへの投資は、金額が大きいがゆえに2020年2月末時点の自己資本比率は24.4%と、2019年2月末の39.8%から大きく低下した。現預金残高が有利子負債残高を上回る実質無借金を維持しているが、ネット現預金(現預金と有利子負債の差額)が減っていることは事実だ。一定規模のニューマネーなしには、いまのペースでの成長投資が継続できないことは明らかだ。
説明会の席上、中村氏が漏らした「とにかく戦うためのお金が欲しかった」という一言は、本音であったことは間違いない。中村社長によると、最大のライバルであるUberEats事業は「オーダー数では出前館の4割くらいまで追いついてきている」という。
UberEatsに追い上げられ、中国の配車サービス「ディディ」の日本法人もデリバリー事業の試験運用を始める中、中村氏がかねてライバルとの差別化のポイントとして強調してきたのが配達品質である。
汁漏れの発生を防ぐ容器や、バイクや自転車の荷台に取り付けるデリバリーボックスはいずれも独自開発。各拠点の配達スタッフは出勤時に身だしなみに加えて飲酒チェックも受ける。配達には電動アシスト付き自転車を多用しており、飲酒運転が違反行為であることをスタッフに叩き込むためだ。
それでも、著名人を起用した大量のテレビCMで露出度を上げるUberEatsに、口コミだけで立ち向かえるわけではない。LINEが投入する300億円のうち、半分強の161億円がマーケティング費用に投じられ、そのうち53億円は認知度向上、つまり宣伝に使われる。だが、中村氏が巨額出資を仰いでまでも得たかったのは、お金以上にLINEのシステム開発力だ。
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