中国が「新型コロナに勝利」を強調する事情 対外的なプロパガンダ戦略「大外宣」を発動

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中国の新型コロナウイルスに関する情報戦略は、ある政策に基づいたものだ。それは「大外宣(大対外宣伝計画)」という、国外に向けての大プロパガンダ戦略である。

中国は経済大国となって以降、「国際社会において国力に見合った発信力を得ていない」という認識を持ち、「大外宣」の計画のもと、各国に中国系のメディアや事務所を作り、優秀な人材を取り込むことで国外での影響力を強め、発信力を得ようとしているのだ。コロナ禍のさなかである2月3日、習主席は中国共産党中央政治局常務委員会で「中国が主導権を握り、国際世論に影響を与えなければならない」と発言している。

中国の情報戦略について、アメリカ在住の社会学者・何清漣氏はその著書の中で「中国は2009年から450億人民元(約6852億円)を投じ、世界への大プロパガンダ戦略を進めている」と指摘している。特に世界中に駐留している新華社の記者の数は6000人を超え、その規模はアメリカのAP通信やフランスのAFP通信、イギリスのロイター通信の世界3大通信社を上回っている。

中国系メディアの報道はニュースではない

同様の指摘は他にもある。『報道の自由度ランキング』で知られる国際人権団体「フリーダム・ハウス」は、1月14日に発表した報告書「Beijing's Global Megaphone」の中で、中国共産党のプロパガンダ手法の1つが国営メディアの国外における多言語展開であると指摘している。

フリーダム・ハウスによると、中国国外で展開される中国系メディア『新華社通信』『CRI』『CGTN 』『China Daily』は、ニュースではなく中国共産党のプロパガンダを広めているにすぎず、また4メディアのなかには中国国営であることさえも明かさずに運営されているものもあるという。

アメリカ国務省は2月、フリーダム・ハウスが指摘した4メディアに人民日報海外版のアメリカ支局を加えた5つの在米中国メディアを、外国の主張を代弁し、政治活動を行う「外国代理人」に指定した。アメリカはこの5つのメディアを独立した報道機関ではなく、「国家の代弁者」だとみなしたのだ。

なお、外国代理人に指定されたことに対して中国は、中国国内の『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』『ウォール・ストリート・ジャーナル 』のアメリカ国籍記者に対し、10日以内に記者証を返却するように求めた。事実上の国外退去を命じたわけで、中国メディアの外国代理人指定への報復措置だと見られている。

かつて中国の指導者・毛沢東は、鉄鋼の生産量で「超英赶美(イギリスを超え、アメリカに追いつけ)」というスローガンを掲げたが、「大外宣」はその情報戦略版だ。アメリカはようやく中国の戦略に気づき、国内における影響力を制限しようとし始めた。

しかし、新型コロナウイルスが猛威をふるう中、アメリカは中国主導で進む世論の風向きを変えることができるのだろうか。(台湾『今周刊』2020年3月17日)

台湾『今周刊』
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