投げ売りされた「金」は安全資産に戻れるのか はたして株価の先行指標として有効なのか

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そうした前例のない大規模景気対策をもってしても、金融市場の混乱を収められるかは微妙だ。新型コロナウイルスをめぐる実体経済への影響は、瞬間風速でいえば、間違いなくリーマンショック以上だ。その破壊力は3月24日に発表された各国のPMIに表面化した。3月12~23日にかけて調査票が集計されたサービス業PMIは日本、アメリカ、ユーロ圏のいずれもが垂直的落下を示し、リーマンショック時のボトムを突き破った。このPMIが示唆するGDP成長率は2桁のマイナス成長である。

今回の新型コロナウイルス問題の厄介なところは、リーマンショックなどのように経済活動の過ちの結果として生じる類のものではなく、経済活動そのものが物理的に阻害されていることである。また終わりの見えにくい新型コロナウイルスの脅威が人々の不安の根底にあることも大きい。こうした条件が重なる下で、金融市場のストレスが完全には緩和されないのは、ある意味自然かもしれない。

金は安全資産でも、米ドル(現金)には劣る

厳しい条件かもしれないが、経済活動および金融市場が安定を取り戻すには、やはり新型コロナウイルス問題の沈静化が条件になる。日々公表される感染者数データが落ち着きをみせたり、有効な治療方法やワクチンが見つかるなどの材料が必要になる。その点、中国や韓国における感染者数増加ペースのフラット化、そして日本の相対的安定は明るい兆候ではあるが、やはりしばらくは強いストレスから解放されることは難しそうだ。

では、仮に感染者数の鈍化など新型コロナウイルス問題に明るい兆候が見えるなどした場合、株価の先行指標として注目すべきは何であろうか。筆者は安全資産としての「金」に注目している。

ここで金の基本的政策をおさらいしておくと、まず「金」は言わずと知れた安全資産の代表格である。したがって、景気停滞が予想される局面では株式などリスク性資産から逃れてきた逃避マネーの受け皿となる。しかしながら、金融市場の緊張が極度に達し、目先の資金繰りさえも危ぶまれる場面において、金は「換金売り」「投げ売り」の対象に含まれてしまう。いくら安全資産といえども、決済に使えない以上、その安全度合いは現金、とくに米ドルに対しては劣るということだ。

次ページ今回の「金価格の値動き」は何を示唆するのか?
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