過去数年の例を考慮すると、リークされているCADデータの信ぴょう性は高いと考えていい。しかし、現在のCADデータが最終バージョンというわけではない。何らかの変更がこの後に加わる可能性は高い。前出のアクセサリーメーカー経営者は「設計データとともに、完成予想のモックアップも出回っている。大枠での変更はないと思うが、細かな部分での数字が変わる可能性はある。専用アクセサリを開発できるほどの確度には、まだ達していない」と判断しているという。
新型iPhoneの情報リーク記事で定評のあるMacRumorsが掲載したモックアップも、おそらく上記と同じバージョンとかんがえられる。同サイトは以前にもiPhone 6の厚みが5.5mmと伝えており、iPod touch並の薄さという情報とも一致する。アクセサリ開発には不十分とはいえ、大まかなデザインイメージは最終製品に近いとは言えると思う。
大まかな外観以外は依然、不確定
しかし、疑問点も少なくない。中でも画素密度については疑問が残る。なぜなら解像度がオリジナルiPhoneの整数倍にならないためだ。
今回、iPhone 4以来固定化されてきた326ppi(1インチに並ぶ画素の数)から389ppiへと向上するとの噂があるのだが、この数字が正しいとするなら、iPhone 6(5.5インチ)は計算上1562×880画素の解像度となる(4.7インチならば1335×752画素)。ちなみに現在のiPhone 5sは4インチで1136x640画素だ。
これまでのiPhone/iPadは、それぞれ原型となった機種の画面解像度を縦横2倍に高めることで、従来アプリとの互換性、同等の使い勝手を保ちながら美しい高精細表示を実現してきた。画素数を整数倍とすることで、画面配置の誤差、描画時の破綻を最小限に留めることができるからだ。
iPhone 5では画面の縦横比が変更されたものの、同じ精細度のまま縦方向に画面が延長されただけだった。これも描画破綻を防ぐ工夫で、古い設計のアプリを動かす際は画面上下に表示を余らせることで対応していた。
389ppiという画素密度が、5.5インチと4.7インチのうち、どちらの液晶パネルを指しているのかは明確ではないが、オリジナル機種の整数倍ではない解像度が採用された場合、従来のアプリケーションに対してこれまでとは異なる方法で対応せねばならない。
また、大規模アップデートが期待されるiOSの新機能、次期iPhoneに施される新たなハードウェア要素などの情報もほとんど漏れていない。つまり、画面サイズ以外、まだ確定的な情報はまだないと言っていいだろう。たとえ現時点で真実であったとしても、発売までに変更される可能性もある。
ひとつはっきりしているのは、今回のアップデートが2年ぶりの大きなiPhoneの進化であること。アップルはこれまでも、2年に1度、外観デザインを含めた大幅なアップデートを施し、同じ機構設計を2年間使うというルールを守ってきた。今年9月に登場する見通しの次期iPhoneは、さらに2年先まで使い続けるものとなる。
それだけに、外観あるいは採用コンポーネントのスペックだけではわからない部分に、アップルのメッセージが秘められているはずだ。そうした、スペックだけでは語れない驚き、メッセージをきちんと用意できるかどうかが、問われている。今回のメジャーアップデートは、成熟化が進むスマートフォンの世界において、アップルが今でも世界にインパクトを与えるイノベーティブな存在であるか否かを測る、リトマス試験紙になるだろう。
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ほんだ まさかず / Masakazu Honda
IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。
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