「PB商品」に棚奪われたメーカーの容赦なき逆襲 中小メーカーが大逆転できる「DtoC」の威力

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PB商品は、出始めの頃こそ「NB商品(ナショナルブランド商品=メーカーブランドの商品)よりも品質が低いのでは?」という疑いの目が向けられていたが、近年は消費者にも安さと品質が受け入れられており、確実にリアルの棚を奪っている。実際、PB商品が売り場で最もいい棚に、大量に置かれることは珍しくなくなってきているのだ。

最近では、「セブンプレミアムは知っているけど、○○食品工業や△△パンは知らない」という子どももいるという。確かに、従来の棚の状況を知らずに今の棚を見せられたら、そういった認識になることもあるのかもしれない。これは欧米でも同様で、どの小売業もPB商品の開発に最も力を入れている。

それだけ、メーカーは急速に棚を奪われてしまっているということだ。メーカーと小売業者間で棚をめぐる綱引きがあり、劣勢のメーカー品は隅に追いやられてしまったのである。

棚を奪われたメーカーの「DtoC」という反撃

しかし、メーカーも黙ってはいなかったのだ。小売業者から棚を奪い返すべく、新たな戦略を展開し始めた。それが、「DtoC(Direct to Consumer)」である。DtoC(D2Cと表記されることが多い)とは、メーカーが商品を小売業者に卸すのではなく、直接、消費者に販売するという方式を指している。

「メーカーは店舗を持たないのに、どうやって販売をするんだ?」

そう思われるかもしれないが、「店舗」の代わりとなっているのが、ネットショッピング、すなわちEC(Eコマース=電子商取引)サイトだ。ECサイトは、メーカーが独自に運営することも可能だし、Amazonや楽天など、既存のECサイトで商品を販売することもできる。

DtoCという選択により、メーカーは自由度の高い販売戦略が可能になった。このDtoCは、小さなメーカーでも、工夫次第で自社商品を人気商品に育てることが可能なのだ。

実際、小さなメーカーがヒットを出した事例も少なくない。例えば小さな水産加工場や農場、牧場が、自分たち独自で商品を開発し、それを自分たちで販売しているケースは少なくない。

大手メーカーは長く、多く売れるものを大量につくるが、小さなメーカーは短いリードタイム(製造に要する時間)で小ロットなものをつくって市場で売ることができる。

そうした商品はスーパーなどには並べることができないが、その価値を認めてくれる消費者がいれば、ECサイトでも十分に勝負できる。

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