「ジープ」の販売台数が10年で13倍も増えた理由 成功の鍵はブランド力+製品力+地道な努力

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ジープに対してクラシカルなイメージを抱く人は多いだろう。確かにラングラーのデザインはクラシックそのもの。しかし、メカニズムは異なる。意外にも、昨今のジープは、最先端技術を積極的に採用しているブランドなのだ。

インスクロール式ターボチャージャーを採用する2.0リッター4気筒エンジン(写真:FCAジャパン)

2018年に発売された新型ラングラーは、新しいパワートレインを採用した。それは2.0リッターの4気筒ガソリンターボ。トランスミッションは8速AT。ダウンサイジングターボ&多段化ミッションという、技術トレンドそのものだ。

主力は従来型の改良版となる3.6リッターのV6エンジン搭載モデルだが、ラングラーが2.0リッターの4気筒エンジンを搭載してきたことは、驚くに値する。

この2.0リッターエンジン搭載モデルに試乗したところ、高速道路の巡航では10㎞/l以上の好燃費をキープ。あれほどの巨体でありながら、リッター2桁を超える燃費性能に驚かされた経験がある。

ちなみにグランドチェロキーは、2013年のマイナーチェンジで全グレードに8速ATを採用。2015年に登場したレネゲード、2017年にマイナーチェンジを実施したコンパスには、9速ATを設定している。

意外に思われるかもしれないが、多段化ATの最先端を走っていたのだ。

販売数を伸ばすための地道な努力

さらに「ジープ」の販売好調の理由として、販売網の充実化も見逃せない。FCAジャパンは、2016年より、日本国内の販売店に新しいコーポレート・アイデンティティ(CI)を導入。店舗のデザインを統一させ、名称も「ジープ世田谷」のように「ジープ+地名」に揃えていった。

新CIを導入し1月18日(土)グランドオープンした「ジープ八王子」(写真:FCAジャパン)

さらに拠点数も拡大し、2016年には69拠点であったものを、2020年1月には80にまで拡大。2020年中には90拠点に増やし、そのうち75拠点で新CIを導入する計画であるという。

ブランドを守り、魅力的な新型を定期的に投入し、販売網を充実させる。ジープが行っていることは、いわばモノを売る基本そのものだ。それを、しっかりと続けたことが、10年間で13倍というジープの成功の理由と言えるだろう。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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