若者で広がる、工業高校離れ 今や就職先はコンビニ!?工場減り人気離散

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だが、最近はITの普及につれて、工業高校の授業科目にも、「情報技術」や「電子計測制御」「プログラミング」など、従来のメカだけでなく、エレクトロニクス関連の比率が増えてきた。卒業後の進路を考え、生徒や親たちもそれを望む。機械、電気・電子のほかに、建築・土木や化学、デザインなどの学科もある。

就職先はコンビニ? カラオケボックス?

授業内容ばかりでない。実際の就職においても、地方の工場勤務を敬遠するからか、「生徒のメーカー志望がだんだん減ってきている」(ある工業高校関係者)。就職する会社も、「コンビニエンスストアやカラオケボックスのチェーンなど、およそ工業高校での授業と関係ないところ」(同)に、躊躇なく就職する卒業生も目立つという。

むろん、地元の工場が閉鎖・撤退したなど、そもそもの就職先の業績が不安定な現況では、生徒や親の気持ちもわからないではない。NECやソニーがパソコン事業を本体から切り離し、実質的に中国レノボや投資ファンドに譲り渡すなどの話は当たり前になった。明日、職場が続いているかも、見通せないのだ。

かつて1960年代の高度成長時代。さまざまな事情で進学できないものの、能力は優秀な大量の中卒・高卒が、現場の工場を支えていた。彼らは30年、40年かけて磨いた「ものづくり」の技術を、次の世代へと体で教え、伝承していった。

 今や少子化のあおりを受け、生徒を集めたい高校側は、工業科を普通科に替え、男子校を共学に替えている。ゆとり教育がもたらした“大学全入時代”の到来で、高卒の比率自体も減った。大学でも、かつての名門・武蔵工業大学が東京都市大学へとブランドをチェンジするなど、もはや「工業」とは、学生向けにモテない代名詞のようだ。

このままでは、いずれ日本の工場から若者がいなくなる。ニッポンの製造業の未来は、決して明るくない。

(詳しくは「週刊東洋経済」3月15日号 特集『工場異変』をご覧下さい)

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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