田舎暮らしで「失敗する人」と「成功する人」の差 多くが決断できない狭き門で楽しむ極意
日本各地の田舎では空き家が目立つ。物件探しは簡単に進みそうだが、実際に足を運んで古民家を内見してみると、湿気や経年劣化で傷みがひどく、物件自体は安くても改修費用に数百万円かかる場合が少なくない。地域によってはシロアリ被害も多いといい、理想的な住みか探しは、なかなか簡単に進まないのが実情だ。
金銭的な問題もある。田舎には、都会のような雇用の場は少ない。働き盛りの世代が移住したとしても、食っていくのが難しい。田舎に住む若者たちは都会に流出し、あちこちで高齢化が進み、古民家の空き家が朽ちていく。加えて、田舎には都会のような娯楽は少ないし、刺激的な生活を送るのも、なかなか難しいかもしれない。
何世代も尾を引いている怨恨
隣人の名前も知らないマンション暮らしからは想像もできないような濃厚な人間関係も存在する。
ある集落では、こんな話を聞いた。集落では山の沢から水を引いており、定期的なタンクの清掃が必要。だが、清掃には必ず2世帯以上が参加しなければならない決まりだという。かつて集落内の人間関係がこじれ、水道に毒物を入れる事件が起きた。今も安全な管理を相互に確認するため、1世帯の人間だけが清掃するのは御法度だ。集落では、何世代も前の怨恨が、今も尾を引いていることがあるという。
こんなふうに田舎暮らしへのハードルは低くない。いろいろな理由や言い訳を見つけて、田舎暮らしを諦めるのが大半であることを、古民家紹介業の男性が語る99%という数字が物語っているのだろう。
だが、「生活費8000円」の40代男性や、退職後に北海道で釣り三昧の生活を謳歌する男性、こだわりのコーヒーを出す喫茶店を開いた人、養鶏やキノコ栽培に精を出す人、紅茶のネット通販が当たり、富を築いて別の地に移住した女性など、田舎暮らしを謳歌する移住の成功者たちにも出会ってきた。
田舎に移り住み、平穏な生活を手に入れるためには、まずあいさつが最低限必要だといわれる。草刈りや祭りなどの行事に参加するのも重要だ。「最初はあいさつしても返事が返ってこなかったが、しつこいぐらいにあいさつしているといつの間にか受け入れてくれた」とは、三重県に東京から移住した男性。地元で暮らしてきた人たちは、都会から移住してきた人たちを警戒している場合もあり、あいさつがこうした殻を破るきっかけになる。
地域の選定も重要だ。同じ町であっても、集落ごとにしきたりがまったく違うこともある。水は、集落で共同管理する山水を使っているなら、協力し合って維持管理していく必要がある。祭りも伝統行事として維持していかなければならない。
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