ANAが「オーストラリア路線」を強化する事情 豪州2位と提携、ライバルJALへ強烈な対抗心
両社が提携したきっかけは、3月29日から羽田空港の発着枠が混雑時間帯で増枠されることにより、ヴァージン・オーストラリアに日本就航のチャンスが生まれたことだ。ANAの藤村専務は「お互いに協力する1番のチャンス。それぞれの国内線がお互いの国際線を維持するために非常に重要で、1年ほど前から準備をしてきた」と明かす。
ヴァージン・オーストラリアが日本に就航した場合、ANAとの提携は既定路線だった。というのも、ANAのライバルであるJALがアライアンスパートナーを組むのは、オーストラリア国内線と日本との国際線でシェア1位のカンタス航空だからだ。その提携関係は強固で、JALが加盟する「ワンワールド」のパートナーであるカンタス航空(44%)とカンタス航空傘下であるジェットスター(31.5%)を加えれば、シェアは90%近くに達する(シェアは日本との国際線の提供座席数シェア、2019年3月時点)。シェア10%しかないANAにとって、パートナーなしにオーストラリア路線を攻略できないことは一目瞭然だった。
成田=パース線は搭乗率80%と好調
ANAはヴァージン・オーストラリアとの提携以前から、オーストラリア路線で独自の路線網を着々と築いてきた。オーストラリア攻略のカギを握るのは2019年9月に週7便で就航した成田=パース路線だ。それまでオーストラリアの主要都市はシドニーやメルボルン、首都キャンベラなど東部に集中しているため、西部のパースへは日本からの直行便がゼロと手つかずだったのだ。
就航当初は「需要が未知数で、とくにビジネスクラスが毎日埋まるとは到底思えない。そのうえ、ANAには現地で国内線を飛ばす提携エアラインもなく、(成田=パース線は)路線戦略のセオリーを度外視している」(業界関係者)と懐疑的にみられていた。
しかし、いざ路線を開設してみると、成田=パース線の搭乗率は「始めて半年も経たないが、すでに80%程度の利用状況。非常に高い需要を維持している」(藤村専務)。これは搭乗率が90%近い羽田=シドニー路線に引けを取らない水準だ。
足元の往復航空券の価格は最安値で15万~25万円程度と相応の値段であり、利益度外視の安売りをして搭乗率を高めているようにも見えない。
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