ゴーンが国内最後のインタビューで語ったこと 逮捕容疑、業績悪化の責任にどう答えたか
――姉に対する顧問料の支払いは、経営者としてやってはいけないことだったのではないですか。
ゴーン氏は、「姉は、ブラジルのフランス商工会の会長だった。リオデジャネイロの政府とつながっていて、われわれのプロジェクトの支援もしていた。だから実在しない仕事に対して報酬を支払ったということはない」と説明した。ゴーン氏の姉が、そのような立場で日産に貢献していたとすれば不正には当たらないが、親族への顧問料支払いということでコンプライアンスや利益相反の問題はある。その支払いについて日産社内でどのような手続がとられていたかが問題となる。
――今回の事件の背景に、日産とルノーの統合問題があるとゴーン氏は主張しています。
2017年にルノーのCEOとしてゴーン氏が再任されるかどうかという問題が起こった時点でのフランス側の意向については、「私が退職するとアライアンスが壊れることを非常に心配していた。フランス政府は私のことを好んではいないが、アライアンスの温存には不可欠という立場だった。ルノー側からは、今回は(CEOの)契約を更改するが、三菱自動車も含めたアライアンスを、私がいなくなってもうまく存続するシステムを作ってくれと言われていた」と説明した。
ゴーン氏が発案した持ち株会社構想
統合問題をめぐって、フランス政府とゴーン氏、日産の日本人経営者の間に考え方の違いがあったことは認めていた。フランス政府が日産とルノーとを統合させようとしていたのに対して、日本側は強く反発していた。ゴーン氏も、統合には一貫して反対したそうだ。
そこで、ゴーン氏が考えたアイデアが持ち株会社(HD)の設立だった。「HDが3社の株式を保有し、HDの株式をパリと東京の証券取引所で同じ銘柄として上場させる。HDの株式はルノーと日産の既存株主が50%ずつ保有する。取締役は10人、日産の取締役会から3人、ルノーの取締役会から3人ずつ推薦し、残る4人は独立した立場にする。各社は事業運営上の自主性を持ち、独立した運営を行う。ただし、あくまで業績次第で、業績がよければ各社はそのままの経営を続ける、業績に問題あれば経営陣が責任を取る」というのがゴーン氏の案で、フランス政府と交渉していたそうだ。
フランス政府も、このHDの提案を検討する方向だったようだが、日産の日本人経営者側は、HDの案では株式の銘柄がルノーと共通になり、(上場会社としての)日産がなくなってしまうことを気にしていた。彼らは、HDではなく、財団のようなものを提案してきた。
財団案は「ルノーが保有する43%の日産株、日産が持つ15%のルノー株、日産が持つ35%の三菱自動車株、これらをすべて財団に入れる。そうすると財団は日産株、ルノー株、三菱自動車株を保有し、その3社に対して大きな影響力を持つが、各社はそれぞれ上場銘柄として残る」というものだった。
しかし、フランス政府は「財団の経営陣が強大な力を持ち、しかも責任を取らされることがない」と強く反対。フランス政府の統合案と日本側の財団案の中間をとって、ゴーン氏がHD案を出したということのようだ。
ゴーン氏は「不可逆的なアライアンス」という表現を使っていて、統合やHDなどさまざまな方法があったのに、日産の古参幹部たちは「統合を狙っている」と捉えたようだ。日産のモチベーションや士気を低下させることになる統合に自分はずっと反対してきたのに、統合問題が(クーデターを起こすための)悪材料として用いられたというのがゴーン氏の主張だ。
――統合問題に対する日本側の危機感がゴーン追放の一因として働いたとしても、ゴーン氏が重大な犯罪を行っていたのだとすれば、追放は仕方ないのでは?
まさにそこが問題だ。日産が社内調査の結果を提供し、検察がゴーン氏の逮捕事実にした事件が、「捜査機関がそれを知れば、刑事事件として立件し、ゴーン氏を逮捕するのが当然」と言えるのか、それとも、ゴーン氏の追放ありきで、無理やり刑事事件に仕立て上げたということなのか。それによってクーデターかどうかが異なってくる。
その点について、私は一貫して、後者だと言ってきた。それは日産社内で解決するべき問題だったと思う。
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