ゴーンが国内最後のインタビューで語ったこと 逮捕容疑、業績悪化の責任にどう答えたか

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――役員報酬の開示が義務付けられた時から報酬を減額した理由について、ゴーン氏はどのように説明していましたか。

「報酬額については、私が自主的に制限した。減らすことに合意したのは、私の報酬の妥当性についての説明にいちいち時間を費やしたくなかったからだ。『本当はもっと欲しかったんだろう』という検察の言い分には反論しない。私はもっと価値のある人間だと思う。しかし、完全に合法になるように指示をしていた。会社にはたくさんの弁護士がいてチェックしている」と言っていた。

ゴーン氏がサインをしたのは秘書室長が作成したメモで、それは、あくまで参考値だと言っていた。その金額と既払い報酬の差額を退任後に支払うことでゴーン氏を日産に引き留めようと、西川(廣人・日産元社長)氏と(日産元代表取締役のグレッグ・)ケリー氏が契約書を作成して署名していたが、それも、2011年と2013年の2年間だけしかなく、退任後の支払いは確定したものではないという主張だった。

私は、最初にゴーン氏が逮捕された直後に、「ゴーン氏が高額報酬の開示を気にしたのではなく、日産の日本人幹部が気にしたのではないか」という趣旨の記事を書いたので、ゴーン氏のこの説明には若干疑問もあった。いずれにしても、「未払い報酬は役員報酬として確定したものではない」とのゴーン氏の主張が正しいことは疑いの余地がないと思う。

住宅購入は特別背任には当たらない

――特別背任についてはどうでしょう。

サウジアラビアやオマーンの代理店を通じた特別背任については年明けにインタビューする予定で、その点はほとんど聞けなかった。しかし、検察捜査の経過からして、これらの起訴事実も証拠不十分なまま無理やり立件して逮捕・起訴したことは明らか。特別背任の公判が遅延するのもそれが原因だと思う。

――刑事裁判で違法性を問えるかは別にして、公私混同に近い資金流用の疑いがあります。

日産が指摘している問題に、ZiA社という投資会社を通じた住宅購入やゴーン氏の姉に対する顧問料の支払いなどがある。住宅購入については、「海外での住宅購入は事実だが、それは秘密でもなんでもなく、ケリーも、(法務部門トップだった)ハリ・ナダも、西川も含めた大勢が知っていたことだ。日産ブラジルの名前ではセキュリティ上よくないから、ZiA社名義で購入することになった。そのアイデアはハリ・ナダが提案したものだ。ハリ・ナダは弁護士なのでルール通りやるはずだ。住宅があれば、ホテルに泊まり、会議室を借りる必要はない」と説明していた。

実質日産名義で購入したのであれば、日産の財産なので、それによって日産に財産上の損害が発生したとは言えず、特別背任には当たらないということを当初から私は指摘していた。会社に対する不正と言えるかどうかは、使用目的が日産の事業のためであったか、会社が負担するホテルの宿泊代を節減できていたかによる。

ゴーン氏が言うように、CEOの西川氏も知っていてハリ・ナダ氏が提案したものならば、手続的には正当な支出だったということになるが、彼らは、絶大な権限を持つゴーン氏の意向を忖度したと弁解するだろう。不正に当たるかどうかは、事実関係の詳細を確認しないとわからないが、いずれにしてもゴーン氏自身や家族の利便を図ったと疑われるという点で、コンプライアンス上、経営者としての倫理上問題があったことは否定できない。しかし、それが会社に損害を与えたと言えるかどうかは別の問題だ。

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