「米イラン戦争」開戦で語られる最悪のシナリオ 数百万人に上る犠牲者、ISの復活…
不幸にも戦争に突入し、2003年のイラク戦争でサダム・フセイン政権を打倒したときのように体制の打倒に至った場合、イラン民間人多数を含む双方で最大数百万人が死亡し、イランで権力の空白が生じて内戦に発展。数百万人の難民がイランから流出し、過激派組織「イスラム国(IS)」のようなテロ組織が巣食う地獄のシナリオもささやかれている。
1月6日に行われたソレイマニ司令官の葬儀では、「アメリカに死を」と叫ばれた。国営テレビによると、首都テヘランの街頭を「数百万人の群衆」が埋め尽くした。ハメネイ師としても、国民向けに弱腰姿勢は見せられず、何らかの報復を行わざるをえないとみられている。
トランプ大統領は、イランが攻撃を仕掛ければ、「イランの52カ所を標的にする」と牽制。対するイランは、最高指導者の軍事顧問が「300カ所(を攻撃する)」と、双方の舌戦が熱を帯びるばかり。この顧問は、アメリカの軍事拠点を狙った報復を行うとも明言した。
イランのファルス通信は6日、イランのミサイル部隊が対イラク国境に移動するのが目撃され、イランがソレイマニ司令官殺害への報復を実行しようとしているとの観測が流れていると伝えた。アメリカは、軍事衛星や無人機などによる偵察活動を強化しているとみられ、激しい情報戦が繰り広げられている。
最悪「全面戦争」という見立ても
こうした動きに先駆け、アメリカのニュース解説メディア「ヴォックス」は3日、想定しうるアメリカとイランの軍事衝突のシナリオを掲載。イランが報復を行う場合、アメリカ軍が第1波のミサイル攻撃でイランに応酬する。これを受けて、イランは保有するミサイルを国内各地に移動させる。
ここでトランプ政権内の意見が割れる。イランが周辺国のアメリカ大使館や軍部隊、同盟国を攻撃するため、ミサイルを移動させたと推測する人々がいる一方、ミサイルを第2派の攻撃から守るために移動させたと判断する人々が出てくる。
異なる主張で駆け引きが繰り広げられ、結果的にイランが反撃を仕掛けるためにミサイルを移動したと主張する側の意見が、トランプ大統領に「認められた」場合、事態はどうなるか。
ヴォックスの見立てによると、仮にアメリカの予測が正しかった場合、問題は少ないかもしれない。が、予測が外れた場合、すなわち、アメリカの波状的な攻撃から逃れるためにミサイルを移動させていた場合、イランはアメリカのミサイル攻撃を侵略的な攻撃と解釈。より大規模な攻撃でアメリカに応酬し、スパイラル的に全面戦争へと突入することになりかねない。
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