エンジェル投資家としての「本田圭佑」真の実力 「ポケットマネー」で起業を支援する背景

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アメリカではスポーツ選手など著名人がスタートアップ企業に出資する「セレブ投資」が活況を呈している。代表的な投資家として、プロバスケットボール(NBA)の元スター選手、コービー・ブライアントやシャキール・オニール、歌手のジャスティン・ビーバー、俳優のアシュトン・カッチャーが挙げられる。とくにカッチャーはエアビーアンドビーやスカイプなど多数の成功企業に投資し、巨額の収益を獲得している。

「もちろん海外のスポーツ選手の投資動向は意識した」と語るのは、元プロ陸上選手の為末大。為末は2012年の引退後、エンジェル投資に乗り出した。シード期の企業に対して1社当たり数百万円を出資しており、現在の投資先はスポーツニュースアプリを運営するオオカミや、スポーツ動画の投稿アプリを手がけるスポーニアなど約10社に上る。

芸能界きってのエンジェル投資家・田村淳

お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳は芸能界きってのエンジェル投資家として知られる。ラジオで情報系番組のMCを担当したことがスタートアップ業界に関心を持つきっかけになったという。ゲストで番組を訪れた起業家と話すうちに、「芸能界にはない新しい発想に大きな刺激を受けた」。今では「起業家は世の中の人を楽しませることでは芸人と同じ」というのがモットーだ。

投資1号案件は、通販サイト作成サービスのベイス。CEOの鶴岡裕太(29)が語った「自分の母親でも使える簡単な通販サイト」というコンセプトに共感し、2012年の創業直後に出資した。

その後、ベイスは約80万店舗以上が加盟する大手プラットフォームに成長し、2019年10月に東証マザーズへの上場を果たした。田村の保有株の価値は約6000万円に拡大し、リターンは数十倍に達したとみられる。これまでにベイスのほか、プログラミング教育サービスの運営会社など数社に投資し、引き続き投資活動を続ける方針だ。

知り合いの投資家からの紹介だけでなく、「自分のSNSに連絡してきた起業家を楽屋に呼んで話を聞いている」。芸人の世界は食事面など後輩の生活の面倒をみる文化が定着しており、年下の起業家を応援するエンジェル投資もどこか似たものを感じているのかもしれない。

芸能界ではお笑い芸人の西野亮廣やタレントの武井壮、歌舞伎俳優の市川海老蔵らがエンジェル投資をしているほか、俳優の山田孝之はコールセンター大手のトランスコスモスと共同でECサイトの運営会社を設立し、最高イノベーション責任者(CIO)に就任して話題となった。テレビ業界の衰退傾向も要因となって、スタートアップ企業に関心を持つ芸能人がにわかに増えている。

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