遊覧飛行とSL体験、一石二鳥ツアー誕生の裏側 成功の鍵は「空港民営化」にあった
「わあ、富士山!ほら、すぐそこ!」――。機内のあちこちから歓声が上がった。子供、年配、お父さんお母さん。さまざまな年代の人が、窓の下を食い入るように見つめている。右側の窓、主翼のすぐ下に、雪をかぶった富士山が手に届きそうなところに迫っている。高度は5000mくらいだろう。
「ただいま飛行機は富士山の頂上の、少し上を飛んでおります」
機内には、コックピットからのアナウンスが流れている。ガイドをしているのは、フジドリームエアラインズ(FDA)の藤田智彦機長だ。
FDAと大井川鉄道のコラボ
10月26日7時50分、FDA3776便富士山遊覧フライト。7時30分に富士山静岡空港を出発した同機は、駿河湾に出て海岸沿いを東進、富士宮市上空を北上している。機材は同社の6番機、エンブラエルERJ-175パープル。スタッフを含め、満席の84人が搭乗している。
「左側のお客様、お待たせいたしました」
富士五湖が見えてきたところでUターン。今度は左側の窓に、富士山と山中湖、そして芦ノ湖が広がった。
「当機はこれより右旋回しまして、右側のお客様から、由比、興津、清水港と三保の松原、そして日本平、久能山とご覧いただきます」
日本平が、朝日を浴びて美しい。清水港には地球深部探査船「ちきゅう」の姿が見え、明治時代に東海道本線が通っていた大崩海岸も、地名どおりの険しい地形を観察できた。
御前崎の手前で旋回し、今度は左側の人々に駿河湾沿岸の風景をたっぷり見せたFDA3776便は、8時20分、約50分の遊覧フライトを終え富士山静岡空港に着陸した。
早朝の遊覧フライトを楽しんだ約80名の参加者たちは、続いてバス2台に乗り込み、大井川沿いを北上。目指すは、大井川鉄道井川線の秘境駅、奥大井湖上である。
これは、フジドリームエアラインズと富士山静岡空港、そして大井川鉄道の3社がコラボレーションしたツアーの一行だ。朝の遊覧フライトを楽しんだ後、バスで奥大井湖上駅を訪問。井川線の列車に乗車し、最後はSL列車の旅を楽しむ。
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